九月。
謎の教育改革か何かのせいで、
夏休みは年々短くなっている。
最も、受験生の夏休みは、
課外でスケジュールがいっぱいになっていたし、
意外と毎日続いた「朝学習」のおかげか、休みなんていう色はどこにもなかった。
夏休み中、オープンキャンパスに出かけていった日だけ、
朝学習を休ませてもらった。
その一日を除いた他の日は、
星宮君におはよう、を言うことが日常になっていた。
約束通り、夏休み期間、毎日続けてもらっていたから、
朝学習、延期ということにした。
夏休みの最後の土曜学校開放日、
「もうすぐ夏休み終わるね。」
朝学習が延期して夕方まで学校に残っていた
星宮君が帰り際に話しかけてきた。
そうだね、と頷いた私。
「月曜日からさ、っていうか、二学期も朝学習続けていいかな?」
赤本ノートと筆箱を鞄にしまいながら、
星宮君は私に尋ねてきた。
三日坊主で終わるだろうという私の予想に反して毎日来てくれた
星宮君を見ていると、このままやめにするのは名残惜しかった。
「いいよ。」
朝、教室に来て勉強する自由は誰にとっても等しくあるものなんだけどな、
なんていう考えが頭をよぎる中、星宮君は
「よかった。」
と安堵の表情を浮かべていた。
そういうわけで、
夏休み明け、二学期の始まりの今日も、
星宮君のおはようで私の一日が始まる。
二学期は席替えがある。
星宮君の背中が斜め前に見えるこの景色が変わってしまう
と思うと、どこか寂しく感じてしまう。
そんな私を置いて、
朝の予鈴が鳴り始めた。
久しぶりの登校のせいか、
クラスメイトの表情はいつにも増して明るく感じられた。
予鈴が鳴り終わってすぐ教室に入ってきた林さんは、
わざわざ、というか今日はいつもよりも余裕があったみたいで、
私のところまで挨拶をしにきた。
「おはよ〜、ひなた!夏休み、終わっちゃったねぇ…
ひなた、夏休みどうだった?」
残暑厳しいこの夏だから、長い髪をポニーテールにまとめ、
いつもよりも短めにセットしたスカートを揺らしながら駆け寄ってくる。
「おはよう、林さん。うん、学校の課外と勉強って感じだったかな。
林さんは?夏休み、楽しめた?」
「優秀だぁ。私なんて、勉強=課外のみって感じだよ笑
今年の夏はちょっと張り切って課外に出てみたけど、意外と楽しかった!」
「そっか、よかった。」
課外が楽しかった、という意味だろうけど、
勉強が楽しかったと聞こえて、なんだか嬉しく思った。
「え、ゆり、今日は早いじゃん。」
夏休みを思い出して、表情が明るいままの林さんを
意外そうに五十嵐君が見つめる。
ひとテンポ遅れて教室に入ってきた五十嵐君に気づいた林さんは振り返り、
「颯太ぁ!おはよう!」
「おう、おはよう。」
五十嵐君をじっと見つめ続ける林さんに、
「なんだよ。」
と五十嵐君が口をひらく。
ニヤッと笑った林さんが、
「今日は遅いじゃん。」
とたっぷりの皮肉を持って言うのと、
本鈴のチャイムの音が重なった。
謎の教育改革か何かのせいで、
夏休みは年々短くなっている。
最も、受験生の夏休みは、
課外でスケジュールがいっぱいになっていたし、
意外と毎日続いた「朝学習」のおかげか、休みなんていう色はどこにもなかった。
夏休み中、オープンキャンパスに出かけていった日だけ、
朝学習を休ませてもらった。
その一日を除いた他の日は、
星宮君におはよう、を言うことが日常になっていた。
約束通り、夏休み期間、毎日続けてもらっていたから、
朝学習、延期ということにした。
夏休みの最後の土曜学校開放日、
「もうすぐ夏休み終わるね。」
朝学習が延期して夕方まで学校に残っていた
星宮君が帰り際に話しかけてきた。
そうだね、と頷いた私。
「月曜日からさ、っていうか、二学期も朝学習続けていいかな?」
赤本ノートと筆箱を鞄にしまいながら、
星宮君は私に尋ねてきた。
三日坊主で終わるだろうという私の予想に反して毎日来てくれた
星宮君を見ていると、このままやめにするのは名残惜しかった。
「いいよ。」
朝、教室に来て勉強する自由は誰にとっても等しくあるものなんだけどな、
なんていう考えが頭をよぎる中、星宮君は
「よかった。」
と安堵の表情を浮かべていた。
そういうわけで、
夏休み明け、二学期の始まりの今日も、
星宮君のおはようで私の一日が始まる。
二学期は席替えがある。
星宮君の背中が斜め前に見えるこの景色が変わってしまう
と思うと、どこか寂しく感じてしまう。
そんな私を置いて、
朝の予鈴が鳴り始めた。
久しぶりの登校のせいか、
クラスメイトの表情はいつにも増して明るく感じられた。
予鈴が鳴り終わってすぐ教室に入ってきた林さんは、
わざわざ、というか今日はいつもよりも余裕があったみたいで、
私のところまで挨拶をしにきた。
「おはよ〜、ひなた!夏休み、終わっちゃったねぇ…
ひなた、夏休みどうだった?」
残暑厳しいこの夏だから、長い髪をポニーテールにまとめ、
いつもよりも短めにセットしたスカートを揺らしながら駆け寄ってくる。
「おはよう、林さん。うん、学校の課外と勉強って感じだったかな。
林さんは?夏休み、楽しめた?」
「優秀だぁ。私なんて、勉強=課外のみって感じだよ笑
今年の夏はちょっと張り切って課外に出てみたけど、意外と楽しかった!」
「そっか、よかった。」
課外が楽しかった、という意味だろうけど、
勉強が楽しかったと聞こえて、なんだか嬉しく思った。
「え、ゆり、今日は早いじゃん。」
夏休みを思い出して、表情が明るいままの林さんを
意外そうに五十嵐君が見つめる。
ひとテンポ遅れて教室に入ってきた五十嵐君に気づいた林さんは振り返り、
「颯太ぁ!おはよう!」
「おう、おはよう。」
五十嵐君をじっと見つめ続ける林さんに、
「なんだよ。」
と五十嵐君が口をひらく。
ニヤッと笑った林さんが、
「今日は遅いじゃん。」
とたっぷりの皮肉を持って言うのと、
本鈴のチャイムの音が重なった。