次の日から、私と星宮君の朝学習は、ちょっと変わったものになった。

まず、星宮君からの質問が減った。

次に、朝、学習ではなくなった。
朝の八時までと決めていたのはどこに消えたのか、
私が課外から教室に戻ると、星宮君が「おかえり」と口にする。
「ただいま」と返事をすることはハードルが高すぎるから、うん、と頷くことしかできない。

そのままお昼休憩を挟み、夕方学習にまで及ぶ。

そして、星宮君は、下校のチャイムが聞こえる頃、
私にはい、とチョコレートを手渡す。
夏場なのにチョコレートを抱えて学校に来たら溶けるでしょ、と突っ込んだ私に
「保冷バッグに入れてるから。」
なんて笑いながら答えた星宮君。

彼がくれるチョコレートは、
私が好きな、カカオ72%のアーモンドチョコレート。

私の好みがどうしてわかるのかな、と思っていたら、
スーパーで売られているアーモンドチョコレートのパッケージに
「鉄分豊富」と記載されていることが目に入り、
笑い出した私を母が不思議そうな顔をして眺めてきたことを思い出す。

私にくれるだけではなく、
星宮君も「今日のご褒美」とか言いながら口にするから、
二人にとって「勉強お疲れ様」の代わりになった。

受験生って、ばっちばちしていて、競争ばかりで、
つまらないものかと思っていたけど、
隣に仲間がいるってすごく嬉しいことだと気づくことができた。

そして、夏休み中、毎日チョコレートを食べていたせいで、
私がすっかりカカオ中毒になってしまったことは、また別の話。