信じられない。
四月、学校が始まって一日目。
遅刻する人がこんなにもいるなんて…。

唖然としている私の周りには、生徒が3人ほど来ているだけだ。

新しい担任の小谷(こたに)先生は「バスの遅延ですかね…」なんてのほほんとしている。
本来は、予鈴の音で着席、本鈴で朝のHRが開始だ。
誰も来ないのではという悪い予感が過ぎる中、
私と同じで迷子になる人が多いクラスなのかな、と思いはじめた自分にそんなはずはないツッコミを入れた矢先、
本鈴の音と同時に、廊下に慌ただしい足音が響きわたりはじめた。

「廊下は走らない!」
学年主任の伊藤先生の怒号が飛んだあと、

三年八組に「遅刻組」が入ってきた。

「遅れてすみません!!」
どこに向かっていっているのか定かでない生徒の群れを確認した小谷先生は
深呼吸をして話し始めた。

「では、三年八組となって初めての朝のHRを開始したいと思います。
まずは…」
「おはよーございます!」
やっと始まった先生のスピーチを人一倍元気な声が中断させた。
(まぁ、どっちにしろ、「遅刻組」がワイワイガヤガヤ騒がしかったけど。)
扉の方に顔を向けると、
去年同じクラスで室長を務めていた
長い髪にカールがかかって、
ただでさえ短いスカートをさらに短くしている林…さんと目が合った。

「あ、おはよう!去年、同じクラスだったよね?三年もよろしくね!」
と無邪気に笑いかけてきた彼女は、さっき先生の話を遮ったことを気にも留めず、
私の斜め後ろの席に座った。
「おはよう。」と先生の話を遮った彼女を諭すように小声で挨拶を返す。
「これで全員揃いましたね。
改めて、三年八組の担任を務めます、小谷俊介です。
高校三年生という人生において大きなターニングポイントとなる一年を皆さんと過ごせることを楽しみにしています。
一年間、よろしくお願いします。」
そういって一礼する先生に、
「せんせー!ターニングポイントってなんすか?
まわるポイントってスタンプラリーのことっすか?」
なんて教室の後ろの方から叫び声が降りかかる。

ターニングポイント、というのは…と説明しようとする先生、
クラス中のゲラゲラとした笑い声、
長い髪と短いスカート、
そんな景色を見て私は気づく。

三年八組、とんでもないクラスに来てしまったと。