日曜日は学校がしまっているから、
久々に一人で勉強できた。
とかいって、
満足感満載の一日になるかと思っていたけど、
そうでもなかった。
私の家は「リビング学習」を進めている、
なんてかっこいいこと言ったけど、
実際はリビングで集中できる時間は限られている。
日曜日、仕事が休みになる父と母の生活圏は
リビングになる。
つまり、私だけの空間ではないっていうこと。
映画鑑賞が趣味の父と母は、
私の学習デスクの隣にあるテレビをつけ、
仲良く映画をみはじめる。
「ひなたも一緒にみる?」
どこからか甘い天使のお誘いが聞こえてきて、
悪魔の私(私の理性)が息を吸って返事をする。
「遠慮しとく。」
そんな理性は映画が始まった途端、
どこかに飛んでいってしまって、
気づけばテレビの前に座って父と母と笑い合っている。
お菓子を食べる前の高揚感と、
その後の罪悪感。
そんなものに苛まれるダイエッターをみていて、
なかなかその感覚を共有できなかった私だけど、
映画を観始める前のドキドキ感、
観ている時のハラハラ感。
そして、観終わった後の
「二時間勉強できたはずなのに」という背徳感。
受験生になって、
こういうものと繋がっている気がした。
思うように勉強が進まない。
家だと誘惑がたくさんありすぎる。
そんな課題にぶち当たって一人、不安げな顔をしていると、
「ひなたはいつも勉強ばかりしてるからね。
たまには息抜きが必要だよ。」
と父が声をかけてくる。
(息抜きって、入れてもない息を抜き続けてたらなくなるよ。)
なんて思いながら、
「息抜きって、受験が終わったらできるよ。」
そう言った私に母が言う。
「今できること、今やらないと。
いつ死ぬかわからないしね。」
どこかの偉い人が言っていた言葉を思い出す。
「明日死ぬかのように生きろ。
永遠に生きるかのように学べ。」
(…私の母は後半部分を聞き逃していたみたい)
「死ぬ」というワードが出てきた瞬間に、
「死ぬまでにやりたいことリスト」の話で盛り上がり始める
父と母。
そんな二人を見て、
(早く学校に行きたいな。)
と一人で思う。
こんなふうに思ったのは、何年ぶりだろう、
と過去に思いを馳せていたら、
日曜日は終わっていた。
翌日。
学校に着くと、三日坊主ではなかった星宮君に会った。
「おはよう。」
「おはよう、今日も早いね。」
「まぁ、三日坊主じゃないしね。」
朝から笑顔の星宮君を見て、
彼は意外と朝が強い人なのではないかと疑う。
「今日はさ、昨日解いててわからなかった問題
持ってきたんだよね…」
そう言いながら星宮君は赤本を手にとる。
赤本、ということに気づいて
顔を背けた私に、どうしたの?と星宮君が尋ねる。
「いや、この間『秘密』って言ってたから。
赤本見たら、どこの大学かわかるでしょ。
だから、見ないようにしないとって…」
「あ、そういうことか。」
(いや、どういうことって思ったの?)
自分のした行動が秘密を暴く行為だって気づいた星宮君は、
手元の赤本に目を落とす。
「でも、俺、この大学行く気ないからなぁ〜。」
「え?」
(行く気もない大学の過去問を解いてるの?)
と不思議に思った私に、星宮君は続ける。
「だから、この大学以外が俺の大学候補ってことで。
別に、赤本見ても大丈夫。」
大丈夫、と言われたのだから大丈夫なのだろうと
気を取り直して星宮君に近づく。
「どの問題?」
「2018年の、大門三なんだけど…」
そう言いながら赤本を開けた星宮君。
「あ、その問題はね…」
と黒板に文字を書いていく私を、
星宮君がそっと眺めていた。
大門三の解説が終わり、
星宮君の「ありがとう、わかった!」
という言葉に自席に戻った二人。
(教室には二人しかいないのに、
自分の席は守っているんだな。)
と斜め前の席で勉強する星宮君を見ながら考える。
一人黙々と問題を解いている様子に、
今日はもう質問ないかなと判断した私は、
自分の勉強するべき赤本を広げ、問題を解き始めた。
久々に一人で勉強できた。
とかいって、
満足感満載の一日になるかと思っていたけど、
そうでもなかった。
私の家は「リビング学習」を進めている、
なんてかっこいいこと言ったけど、
実際はリビングで集中できる時間は限られている。
日曜日、仕事が休みになる父と母の生活圏は
リビングになる。
つまり、私だけの空間ではないっていうこと。
映画鑑賞が趣味の父と母は、
私の学習デスクの隣にあるテレビをつけ、
仲良く映画をみはじめる。
「ひなたも一緒にみる?」
どこからか甘い天使のお誘いが聞こえてきて、
悪魔の私(私の理性)が息を吸って返事をする。
「遠慮しとく。」
そんな理性は映画が始まった途端、
どこかに飛んでいってしまって、
気づけばテレビの前に座って父と母と笑い合っている。
お菓子を食べる前の高揚感と、
その後の罪悪感。
そんなものに苛まれるダイエッターをみていて、
なかなかその感覚を共有できなかった私だけど、
映画を観始める前のドキドキ感、
観ている時のハラハラ感。
そして、観終わった後の
「二時間勉強できたはずなのに」という背徳感。
受験生になって、
こういうものと繋がっている気がした。
思うように勉強が進まない。
家だと誘惑がたくさんありすぎる。
そんな課題にぶち当たって一人、不安げな顔をしていると、
「ひなたはいつも勉強ばかりしてるからね。
たまには息抜きが必要だよ。」
と父が声をかけてくる。
(息抜きって、入れてもない息を抜き続けてたらなくなるよ。)
なんて思いながら、
「息抜きって、受験が終わったらできるよ。」
そう言った私に母が言う。
「今できること、今やらないと。
いつ死ぬかわからないしね。」
どこかの偉い人が言っていた言葉を思い出す。
「明日死ぬかのように生きろ。
永遠に生きるかのように学べ。」
(…私の母は後半部分を聞き逃していたみたい)
「死ぬ」というワードが出てきた瞬間に、
「死ぬまでにやりたいことリスト」の話で盛り上がり始める
父と母。
そんな二人を見て、
(早く学校に行きたいな。)
と一人で思う。
こんなふうに思ったのは、何年ぶりだろう、
と過去に思いを馳せていたら、
日曜日は終わっていた。
翌日。
学校に着くと、三日坊主ではなかった星宮君に会った。
「おはよう。」
「おはよう、今日も早いね。」
「まぁ、三日坊主じゃないしね。」
朝から笑顔の星宮君を見て、
彼は意外と朝が強い人なのではないかと疑う。
「今日はさ、昨日解いててわからなかった問題
持ってきたんだよね…」
そう言いながら星宮君は赤本を手にとる。
赤本、ということに気づいて
顔を背けた私に、どうしたの?と星宮君が尋ねる。
「いや、この間『秘密』って言ってたから。
赤本見たら、どこの大学かわかるでしょ。
だから、見ないようにしないとって…」
「あ、そういうことか。」
(いや、どういうことって思ったの?)
自分のした行動が秘密を暴く行為だって気づいた星宮君は、
手元の赤本に目を落とす。
「でも、俺、この大学行く気ないからなぁ〜。」
「え?」
(行く気もない大学の過去問を解いてるの?)
と不思議に思った私に、星宮君は続ける。
「だから、この大学以外が俺の大学候補ってことで。
別に、赤本見ても大丈夫。」
大丈夫、と言われたのだから大丈夫なのだろうと
気を取り直して星宮君に近づく。
「どの問題?」
「2018年の、大門三なんだけど…」
そう言いながら赤本を開けた星宮君。
「あ、その問題はね…」
と黒板に文字を書いていく私を、
星宮君がそっと眺めていた。
大門三の解説が終わり、
星宮君の「ありがとう、わかった!」
という言葉に自席に戻った二人。
(教室には二人しかいないのに、
自分の席は守っているんだな。)
と斜め前の席で勉強する星宮君を見ながら考える。
一人黙々と問題を解いている様子に、
今日はもう質問ないかなと判断した私は、
自分の勉強するべき赤本を広げ、問題を解き始めた。