* * *

 ルナとハルは、駅前に景太と百合と菫とヨルを呼び出した。もうすっかり夕方だった。

「急にどうしたんだよ、ルナ、ハル」

 不思議そうな顔をする景太達を、ルナは真っ直ぐに見つめる。

「景太達に、見てほしいものがあるんだ」

「見てほしいもの……?」

 ルナとハルは頷き、祈るように手を握った。

 すると、2人の体が光り出し、翼が生えたのだ。

 更に、ルナには黒くて立派な角が、ハルには丸い天使の輪っかが現れた。

「2人とも、その姿は……」

「……そう。僕は悪魔。ハルは天使なんだ」

 そして、ルナは話した。天使と悪魔の存在や、自分達はどうして現世に来たのか。そして自分達のこと全て……。

「……そうだったのですか」

「黒崎君とハルさんが、悪魔と天使だったなんて……」

 菫と百合が驚いていると、話を聞いている最中、ずっと俯いていた景太が顔を上げた。

「……悪魔でも天使でも、ルナは俺の親友だし、ハルは俺達の友達だ」

「景太……」

「幸せになれよ。ルナ、ハル」

 景太はそう言うと、2人に向かってニカッと笑った。

「……ありがとう、景太」

 景太の様子を見ていた菫と百合も、ルナとハルに向かって笑顔を見せる。

「花里君の言う通りですわ。……ルナ君、ハル、お二人の幸せ、ずっと祈っていますわ」

「そうね。2人とも、体には気をつけて。どうか元気でね」

「藤堂さん、雨宮さん、ありがとう」

 菫と百合は柔らかく微笑んだ。

 菫の隣にいたヨルもまた、ルナに優しく微笑んでいた。

「……ルナ兄、行くんだね」

「ヨル……残してしまってごめん」

「オレのことは心配しないで!ルナ兄は自分の幸せだけ考えてれば良いんだから」

「でも……」

「お人好しなんだから……ルナ兄、本当に悪魔向いてないね」

 ヨルはそう言って笑った。
 
「……ありがとう。ヨル」

 ルナは、ヨルに向かって目を伏せながら微笑んだ。

「ハルさん、ご家族にお別れは?」

 百合が尋ねると、ハルは寂しそうに笑った。

「会いに行ってる時間は無いけど……メッセージは残したよ」

「そう……」

「……大丈夫。涼介と母さんなら、元気にやっていけるよ。」

 ハルはそう言って微笑んだ。

「……それじゃあ、そろそろ行こうか、ルナ」

「うん……そうだね。ハル」

 2人は手を繋いだ。

 これから何があっても、この手だけは離さない。2人はそう心に誓った。

 2人が空に浮かび上がると、再び光り輝き、4人は思わず目を閉じた。

 再び目を開けると、2人の姿は見えなくなっていた。

「行ってしまったのでしょうか……」

「……うん。天使と悪魔は、本当なら人間に見えないから。2人とも手を繋いで、向こうの空を飛んでるよ」

 ヨルはそう言うと空を仰いだ。

(幸せになってね、ルナ兄)