* * *

 部活のある2人と別れてルナは1人家に帰ると、スマホを取り出した。菫の勉強会に景太と百合を誘うためだ。

「えーっと、今度藤堂さんの家で期末テストの勉強会を開くんだけど、2人もどうかな?っと……」

 ルナは送信ボタンを押した。まだ2人は部活だが、終わったら見てくれるだろう。

 ホーム画面に戻ると、宛先一覧に「白神ハル」の文字があった。

 病院を出る前に連絡するとは言ったものの、あれ以来ルナはハルと連絡は取り合っていなかった。

「そういえばハルって、超進学校に通ってるんだっけ……」

 勉強会に誘うのを口実に、ハルに連絡してみようかと思い、ルナはトーク画面を開いた。

 どんな風に誘ったら自然か……嫌な思いをさせないメッセージを送らなければ。

 そこまで考えて、そもそも勉強会に誘うこと自体が迷惑にならないかという不安が過る。

「そもそも、ハルの学校もテストだとは限らないし……第一、ハルは藤堂さん達のことよく知らないし……」

 ルナは一人頭を抱えた。1番始めの連絡が、勉強会でいいものか。

「でも、会えたら嬉しいかも……」

 ルナは30分間悩み、葛藤した挙げ句、友達と勉強会するんだけど、ハルも来ませんか?とだけ打って送信した。

(送ってしまった……)

 変に思われないだろうか、やっぱり連絡しない方が良かっただろうか。

 ルナはベッドにうつ伏せになり、一人唸った。

「あー……もう考えるの止めよう……晩ご飯作ろ……」

 そう呟き、ルナは1人台所に立った。

 人間界での一人暮らしにも慣れたルナにとっては、料理なんて簡単だ。ルナは慣れた手つきで野菜を切っていく。今日は野菜炒めだ。

 野菜を切り終え、火にかけようとしたその時、ルナのスマホが鳴った。
 
「ハル!?」

 ルナは慌ててスマホを見る……が、ただの夕方のニュースだった。

(なんだ、ニュースか……)

 ルナが落胆したその時だった。

 ティロン!とスマホが鳴った。

(ハルからだ!)

ルナは慌ててトーク画面を開いた。すると画面には短く

『行くよ!場所教えて』

と記されていた。

「良かったぁ……!」

 ルナは小さくガッツポーズをして、返事を打ちこんでいく。

「藤堂さんっていうお金持ちのお屋敷があるんだけど、そこでするんだ」

『ごめん。場所が分からないから待ちあわせしても良いかな?』

「大丈夫!じゃあ病院前で待ちあわせしよう」

『分かった。楽しみにしてるね』

 一通り打って、ルナは机に突っ伏した。

 ハルにまた会える。それだけで何故か嬉しかった。

(勉強会、楽しみだな……)