* * *

──ルナに気持ちを打ち明けた。ずっと悩んでいたのに、最後はお別れしなくちゃいけないと分かっていたのに。ルナの優しい言葉を聞いていたら、自然と口から出ていた。

(ルナ、びっくりしてたな)

 遊園地の入り口でルナと別れ、ハルは自分の学校の集合場所へと急いでいた。

「あ、ハル!どこ行ってたの?」

 美亜がハルを見つけるなり駆け寄ってきた。

「ごめん、ちょっと抜け出してた」

「もう……いなくなる前に一声かけてよね」

 美亜はそう言うと頬を膨らませる。

「うん、ごめん」

「まぁ、いいけどさー……てか、何かいいことあった?」

「え?」

「顔がニヤけてるよ?」

 そう指摘されて、ハルは自分の頬を触った。

「あ、もしかして黒崎君と何かあった!?」

 そう目を輝かせる美亜に向かって、ハルは悪戯っぽく微笑む。

「ふふ……内緒」

「もー!ハルってば、いつもそればっかり」

 再び頬を膨らませる美亜を見て、ハルは誤魔化すように笑った。

 
 その時。


 ハルのスマホが鳴った。

「ごめん、ちょっと出てくる」

「うん。でも、急ぎなさいよ!」

 ハルは集合場所から少し離れ、電話を取った。

「……もしもし、お父様」

『ハル、修行は順調なようだな』

「はい。どうかなさいましたか?」

『実は、お前に報せなければならないことがあってだな……』

「報せたいこと……?」

『ああ。それがな……大事なことなんだ』

 ……大事なこと。父の重い口ぶりに、ハルは少し体を強張らせる。

『先程魔界へ偵察に行ってきたものの情報なのだが……』 


 


『お前の命を狙う悪魔がいる』

 



「え……?」

 ハルは言葉を失った。スマホを持つ手が、カタカタと振るえる。

『だから、お前の婚約者を人間界に遣わせた。その悪魔を探し出して、様子を見て貰おうと思ってな。だから安心してもいいが……くれぐれも、気をつけるんだぞ』

「……はい」

 ハルが辛うじて返事をすると、電話が切れた。ハルはその場から動けずに、立ち尽くす。

 悪魔に命を狙われている……婚約者の来訪……。

 もう頭がいっぱいだった。

「ハル!全然来ないから呼びに来たよ!」

 美亜がハルのもとへ駆け寄ってきた。

「もうみんな集まってるから……って、顔色悪いよ、大丈夫?」

「ああ……大丈夫。すぐ行くよ」

 ハルはなんとか取り繕って、笑顔を作って見せた。

 なぜだか、ルナに会いたかった。