* * *

 舞台裏から出ると、涼介がルナに駆け寄ってきた。

「ルナ!王子様格好よかった!」

「ありがとう、涼介君……って、涼介君、走って大丈夫なの?」

 ルナが尋ねると、涼介は明るい笑顔で頷く。

「うん!最近どんどん病気が良くなってるんだ!」

「そっか……良かったね」

 ルナは嬉しそうな涼介を見て微笑んだ。その様子を見て、2人に歩み寄ってきたハルも優しく微笑む。

「ルナ、おつかれさま」

「ありがとう、ハル。……僕の王子様、どうだった?」

 ルナが少しドキドキしながら尋ねると、ハルはニッと笑った。

「うん!すごく似合ってたよ」

 そう言って笑うハルを見て、ルナは顔を赤くして頬を掻く。

「お、やっぱり来てたか」

 景太と菫と百合も、こちらに向かって歩いてきた。

「花里君、白雪姫おつかれさま」

「おう。似合ってただろ」

「うん!すごくね」

 ハルは可愛らしい姿の景太を思い出し、クスクスと笑った。

「ハル、お久しぶりですわ」

 菫はハルに柔らかい微笑みを向ける。それを見て、ハルも表情を明るくした。

「菫!久しぶり」

「元気にしてらした?」

「うん。……あ」

 ハルはあることを思い出し、気まずい表情をする。

「菫、ちょっといいかな……?」 

「ええ……いいですけど」

 ハルは戸惑う菫を連れて少し離れた場所へ移動すると、頭を下げた。

「急にどうしたんですの?」

「ごめん……もう君のこと応援できない」

「え……?」

「ボクも、ルナが好きなんだ」

 ハルはそう言うと、顔を上げて菫を見つめた。

 ハルは迷っていた。ルナが人間なら、同じく人間の菫と結ばれた方が幸せになれるのではないか、と。

 しかし、ハルはルナの隣にいたかった。

 限られた時間……天界に帰るまでの間でいいから、ルナに恋していたかった。

 少しの間だけでも、ルナの1番近くにいたかったのだ。

「そう、ですの……」

 菫は少しの間言葉を失ったが、すぐに口を開いた。

「なら、ライバルですわね」

「え?」

「わたくし、負けませんわよ。ハル」

 そう言って微笑む菫を見て、ハルは微笑み返した。

「……うん」

「お姉ちゃん、見つけた!」

 遠くから駆けてきた涼介が、ハルに抱きついた。  

「ルナ、文化祭見て回るんだって。お姉ちゃん達も行こうよ!」

「……うん。分かった」

 ハルは涼介に微笑んで頷いた。

「よし、行こうか」

 ハルはルナ達が待っている方へ歩いて行った。