* * *

 帰り道を歩きながら、景太はルナに尋ねた。

「文化祭、楽しめたか?」

 そう問いかけられ、ルナは今日のことを思い返した。

 お化け屋敷では散々怖がり、挙げ句の果てには余裕がなくなってハルを驚かせてしまった。

 ルナは思わず肩を落とす。

「散々だった……」

「マジかよ」

 ルナの様子に、景太は苦笑いした。

「うん、格好悪いところ見せちゃって……でも」

 ルナの脳裏に保健室でのハルの笑顔が浮かぶ。確かに失敗はしてしまったが、あの笑顔を見られただけで、そんな今日にも意味はあったように思えた。

「……うん、良かったよ」

 ルナは少し微笑みながら、そう答えた。

「そうなのか?よく分かんないけど、なら良かったな」

「景太はどうだった?」

 ルナが尋ねると、景太は空を見上げながら考え込んだ。

「……うん。楽しかったけど……何か足りない気がした」

「何か足りない?」

「ああ。いつも傍にあるような何かが……」

 いつも景太の傍にあって、今日景太の傍に無いもの。そんなの1人しかいない。

「それって、雨宮さんじゃない?」

 ルナがそう言うと、景太はハッとした。

「そうかもしれない……」

「きっとそうだよ!」

 すると景太は少し考えて、頷いた。

「俺、百合の家に寄ってくる。それで、話してくる」

「……そっか。頑張ってね、景太」

「おう」

 景太はルナに、じゃあな。と言い残し百合の家に向かって駆けだした。