* * *

「あはは!ルナってばすごく怖がっちゃって……」

 お化け屋敷から出てくるなり、ハルは笑い始めた。

 ルナは涙目になりながらハルを睨む。

「でも、決め手はハルだからね!」

「うんうん……ごめんって……」

 笑うことを止めないハルを見て、ルナは恥ずかしくてそっぽを向いた。

(格好悪いな、僕……)

 1人落ち込むルナを見て、ハルはぽんぽんとその背中を叩いた。
 
「可愛かったよ、ルナ」

 そう言いながら笑うハルを見て、ルナはある不安に襲われた。

(もしかして僕、異性として意識されてないんじゃないか……?)

 それは嫌だった。

 ルナは気持ちの勢いに任せてハルの肩を掴んだ。
  
「る、ルナ?」
   
 一体どうしたのかと戸惑うハルだったが、ルナは勢いのまま言った。

「僕、君には、可愛いじゃなくて格好いいって思って欲しいんだけど!」

「え……」

 目を丸くしたハルを見て、ルナはようやく我に返った。

「……あ」

 慌ててハルから手を離し、数歩下がって距離を取る。

──最悪だ。格好悪いにもほどがある。

「ご、ごめん……」

「あ、うん……ボクも揶揄ってごめん……」

 2人の間に気まずい空気が流れる。ルナは今すぐ家に帰りたかった。

(こんなつもりじゃなかったんだけどな……)

 そう思ってうなだれるルナの肩をハルはポンと叩く。

「ほ、ほら!気を取り直して、別の所行こ!」

 そう言ってハルは歩き出した。

(そ、そうだ……せっかくハルと一緒にいられるんだから、楽しまなきゃ)

 そう思い直して、ルナがハルについていこうとした、その時。

「どいてどいて!」   

「うわっ!」

 廊下の向こう側から段ボールを持った女子生徒が走ってきたのだ。彼女とハルは思い切りぶつかってしまい、ハルは体制を崩して転んでしまった。 
 
「わ!ハルちゃんごめん!大丈夫?」

 女子生徒はハルに気付いて、段ボールを床に置き慌てて声を掛ける。

 ハル体を起こすと、ピクリと動いた右足を押さえて顔を歪めた。

「うん……ちょっと足をひねったみたい」

「やだ、どうしよう……ハルちゃん劇もあるのに……ほんとにごめん!」

「いや、大丈夫だよ。気にしないで……」

 そう笑顔を作りつつも、ハルの顔色は明らかに悪かった。それを見たルナはいてもたってもいられず、ハルをお姫様抱っこして立ち上がった。

「ルナ!?」

「僕が保健室に連れていくよ」

 そう言うと、ルナは驚いた様子の女子生徒を見て言った。

「ハルは僕に任せて」

 ルナの言葉を聞き、女子生徒は両手で口を覆いながら顔を赤らめる。

「は……はい!」

 女子生徒が頷いたのを確認して、ルナは廊下を歩き始めた。