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 いよいよ明日が体育祭だ。

 教室では、体育祭ムード一色で、黒板に寄せ書きをしている生徒もいる。

 赤組絶対優勝するぞ!と書かれた黒板はすっかり賑やかだった。

「いよいよ明日ですわね、ルナ君!」

 菫がわくわくした様子でルナに声をかけた。

「優勝目指して頑張りましょう!」

「うん、そうだね」

 菫にそう微笑みつつも、ルナは景太と百合の様子が気がかりだった。

 百合が倉庫で倒れていたのを助けてから、2人とも明らかに元気がない。いつもは一緒に帰る放課後も別行動だった。

(何かあったのかな……)

 ルナが景太を心配そうに見ていると、それに気がついた景太がこちらへ近づいてきた。

「ルナ、どうかしたのか?」

「いや、元気がないから心配で……」

「え、そうか……?」

 景太は不思議そうに首を傾げた。どうやら本人に自覚がなかったらしい。

「そうだよ。景太、雨宮さんが倒れてから、ずっと変だよ。……何かあったの?」

 すると思い当たる節があるのか、景太は苦笑いして頷いた。

「……実は、百合に避けられてて」

「雨宮さんに?」   

「ああ。でも心当たりがなくて困ってるんだ」

「そうだったんだ……」

 ルナは内心驚いていた。あの2人でもそんなことがあるのか。

「……まぁ、明日の体育祭には支障はきたさないから。心配かけて悪かったな」

 そう言って笑う景太は、やはり落ち込んでいるように見えた。

「……あ、そうだ。明日、ハルも来るのか今日のうちに聞いておけよ」

景太は他の人に聞こえないようにルナに耳打ちした。

「えっ……!」

 突然ハルの名前を出されたルナの口から、変な声が漏れる。その様子を見た菫が、不思議そうな顔で首を傾げた。

「何の話ですの?」

「いや、なんでもない!」

 ルナが笑顔を作りながら必死に誤魔化していると、景太はいつものように笑った。

「じゃあ俺、今日は用事があるから先帰るな」

 景太はそう言うと、手を振って教室を出て行った。

(……僕も今日、涼介君の病室に寄ってみようかな)

 ルナは荷物を片付けながら、心の中でそう呟いた。