ルナが気がつくと、白い天井と共に、心配そうにこちらを覗く景太と百合の姿が目に入った。

「ルナ!」

「黒崎君!」

「2人とも……ここは……?」

ルナの問いかけに、景太が心配そうな顔で答える。

「病院だよ。お前、1週間も目を覚まさなかったんだぞ」

景太の答えに、ルナは目を丸くした。

「そんなに……?」

「ああ。ルナ、何があったか、思い出せるか?」

景太に尋ねられて、ルナは過去のことを思い返した。

「信号無視したトラックから藤堂さんを助けようとして……って、藤堂さんは?!」

「ほんのかすり傷だったよ。今日はピアノのレッスンで来てないけど、すごく心配してた」

「そっか……。じゃあ、顔見せに行かないと……」

そう言って起き上がろうとしたルナのことを百合は慌てて止めた。

「待って!黒崎君、あなた今両足を骨折してるのよ!」

「え……?」

ルナが慌てて布団をめくると、両足がギプスで固定されていた。

「トラックに撥ねられてそれだけで済んだなんて奇跡だってお医者さんは言ってたけど……まだ無理しちゃ駄目よ」

「そ、そうだったんだ……」

トラックに撥ねられても脚が折れただけで助かったのは、ルナが悪魔だからだ。

悪魔は人よりもずっと体が丈夫で、回復力も強い。だから大事故に遭っても命に別状はなかったという訳だ。

しかし、両足を怪我してしまったとなると、しばらくは学校に行けないだろう。

少し落ち込むルナを見かねて、景太は明るく言った。

「まぁ、今日は仕方ないさ。それより久しぶりに目が覚めたんだから、ちょっと散歩しようぜ。俺が車椅子押すからさ」

たしかに、怪我をしてしまったことを悔やんでいても仕方がない。今は気分転換も必要だろう。そう思い、ルナは景太に頷いた。

「うん……そうだね」

百合と景太に補助されながら、ルナは車椅子に乗り、景太に連れられて病室から出た。