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 景太は体育館に向かった。部活終わりの生徒とすれ違う中、用具係と思しき生徒は見当たらなかった。

(百合、どこに行ったんだ?)

「あれ、花里じゃん。どうしたの?」

 バスケ部の友人が、景太を見るなり声をかけてきた。

「用具係ってどこで活動してるんだ?」

 景太が尋ねると、友人は不思議そうに首を傾げた。

「体育館脇の倉庫だと思うけど……もう随分前に何人か帰って行くの見たぞ?」

「え……?」

 ということは百合も帰ったのだろうか。だが、真面目な百合のことだ。部活に顔を出さない訳がなかった。

「……さんきゅ。ちょっと見てくるわ」

 景太はそう言って倉庫に向かった。

 倉庫に辿り着くと、その小さな扉にはどこから持ってきたのか、長い木材がつっかえ棒のように立て掛けられていた。

「なんだこれ……」

 景太は木材を脇に避けると、倉庫のドアを開けた。

 9月とはいえ、厳しい残暑が続いている。そのため倉庫の中は蒸し暑く、息をするのも苦しかった。

 景太は倉庫の中で百合を探し回った。

「百合、どこだ?」

 すると、奥の方にジャージ姿の百合が倒れていた。

「百合……!」

 景太は慌てて百合に駆け寄った。

「景太……?」

「百合、大丈夫か?」

 百合の顔色は悪く呼吸も浅かった。景太の声に、百合は苦しそうに答える。

「ごめん、具合悪い……」

「分かった。すぐ保健室に連れて行く」

 景太は百合をおぶり、保健室へと急いだ。