2人だけの秘密

ここはおれ達のふたりの秘密基地だった
あの夏、君に出会っておれの世界は180°変わった




部屋の中も外もサウナみたいに暑くエアコン無しではいられないそんな日が続き、気が付くと夏休みが始まっていた。


(ハル)、掃除の邪魔だからそこに居ないでよ。」

「なんで、(すず)もいるじゃん。」

「えっ〜、すず、今めっちゃいいところなんだけど。どかなきゃダメ〜?」

「はぁ、鈴もそのテレビ観終わったらどいてよ」

「はーい。ハル兄残念でした〜」



夏休み早々、リビングで本を読んでいたおれは、早速母の邪魔者だ。仕方なく、リビングから出ようとしたら


「あっ、(はる)、なるべく部屋にはいないでね。(あお)が集中できるようにしたいの。今が大事な時期なのよ。(はる)ならわかってくれるわよね。」

「わかってるよ。」

「ならいいけど、、(はる)も来年なんだから、今からかんがえておくのよ。」

「はいはい」

「そう。(あお)が居なかったら部屋も使っていいからね。」

「うん。」


そう言われて、おれはすぐさまリビングを出て部屋に直行した。部屋に兄がいないと心の中で祈って、扉を慎重に開けた。そこには、机で頭をかきながら兄が勉強をしていた。今までにこんなに2人部屋を恨んだことは無いだろう。



「あっ、(はる)ごめん。今日1日部屋を使います。ホントにごめん。」

「いいよ。兄ちゃん今、大事な時期なんだろ。」

「はるぅ、なんて良い弟なんだ〜。」


兄が急に近づいてきて抱きしめてきた。


「ちょっと、兄ちゃん、やめて、痛いから、」

「ごめんごめん、兄ちゃん嬉しくて」

「はいはい、じゃあ、おれ出かけてくるわ」

「はーい、(はる)ありがとな。」



それを聞いておれは、部屋を出た。一応、1回リビングに顔を出しておく。



「母さん、おれ出てくるわ。」

「はーい「おかぁさん、お腹すいたー」

「んっ?はいはい、おやつね」



母さんの困ってるように見えて嬉しそうなのを見ておれは、そっと扉を閉めてバックと自転車の鍵をもって家を出た。
外出た瞬間、立ちくらみがした。とても暑い。ジリジリと肌を刺してくる。家を出て、数分汗が止まらない。自転車に乗っているのに吹いてくる風は、生暖かく気持ち悪い。
とりあえず1回、休憩をしようと水を自動販売機で買った。そして、川沿いまででた、俺のお気に入りの場所へと向かう。分かりづらい草道を通って橋の下まで来て止まる。ここは、今日も人気がなく静かだ、しかも、日陰だからひんやりしていて気持ちいい。冷たい水を生き返るように飲む。
一息ついたおれは、まだギラギラと照らしつける太陽の下に出る勇気はなくそのまま持ってきた本の続きを読み始めた。

気が付くと、本も中盤で本格的に物語が動いてきたと思ったその時、

「うわっ、何この人最悪ー」

と、自分の隣りで聞こえた。しかも、自分の耳元である。さっきまで誰もいなかったこの場所で、横を見たら1人の女子と鼻がぶつかりそうな距離で目が合った。綺麗な目をして鼻筋が通った真っ白な彼女と。世間一般で言う美人だと思う。

「えっ、ちょっ、まっ、えっ、誰ですか?」


「えっ、あっ、勝手にごめんね。私は、(なぎ)って言います。」

おれは動揺が隠せなかった。

「んっ?えっと、だからってなんで一緒に本を読んでるんですか」

「んー?いやぁ〜、散歩してたんだけど暑すぎて歩けないって思ってたらここ見つけて、涼んでいこうと思ってたら先客の君がいたわけ」

って感じみたいな顔をしている彼女にまだおれは納得できていない

「はぁ、でなんで一緒に本を読んでるんですか」

「えっ?えっーと私が、来ても君が気づかなくて少し暑さがよくなってきたらちょっと気になっちゃって、めっちゃ夢中で読んでるし楽しそうだったから」

彼女は、少し頬を赤らめながらテヘッて顔をしてる。何に赤らめてるのかは全然分からないけど

「全然意味わかんないですけど、まぁわかりました。」

「ほんとにー!よかったぁ!!君ならわかってくれてると思ったよ〜」

とニコニコして笑う。まだ出会って5分ぐらいだけど彼女は表情がとても豊かなのはわかった。後、そんなに後先考えないタイプだということも。

「てか、今何時かわかる?」

「へっ?ちょっと待ってくださいね」

おれはすぐスマホを出して確認した

「えっと4時ですね。」

家を出てからもう2時間弱経っていることが判明した。


「えっ、嘘!やばい怒られる。ごめんね。えっと何くんだっけ?」

彼女は急に立ち上がって言った。

「えっ?おれは小佐川悠、」

「おっけ!じゃあはるくん!またね!!」

彼女は、そう言って颯爽と帰ってしまった。

「なんか嵐みたいな人だったな」

本当にこの言葉が似合う人がいるんだと初めて知った日だった。

さっき買ったはずの水はとても生温くて美味しいとは言えなかったがなんか気持ちはスッキリしていた。