「レヴィア様の凄さがわかったろ?」
俺が聞くと、二人とも無言でうなずいていた。
「我の偉大さに恐れ入ったか? キャハッ!」
上機嫌で戻ってくるレヴィアだが、また全裸である。その姿は、先ほどまでの恐ろしさを微塵も感じさせない、無邪気な少女そのものだった。
「レヴィア様、服、服!」
俺は急いで指摘する。
「忘れとった。ガハハハ!」
楽しそうに笑うレヴィアをジト目で眺めながら、俺は思わずため息をついた。
◇
「お待たせしましたー!」
戻ってきたアバドンの声が店内に響き渡る。両手いっぱいに酒と料理を持って現れた彼の姿は、まるでヒーローのようだった。
「待ってました!」「わーい!」「ええぞ、ええぞ!」
店内に拍手と歓声が巻き起こる。
俺が隣に台を広げて、調達した物を並べていると、レヴィアの目が輝いた。
「おっ! これはええな」
ウイスキーのビンを一本取った彼女は驚くべき行動に出る。
逆さに持ったビンの底で、レヴィアは指をパチッと鳴らした。すると、魔法でも使ったかのように、底の部分がきれいに切り取られ、即席の巨大グラスが完成する。それを一気飲みしていくレヴィア――――。
みんなが信じられないという目でおののく中、レヴィアは飲み干して満足げな表情を浮かべた。
「プハー! 最高じゃな!」
ドラゴンはすることなすこと全てが規格外で、思わずみんな圧倒される。その存在自体が、この世界の不思議さを体現しているようだった。
「カーッ! のどが渇くわい! チェイサー! チェイサー!」
レヴィアの豪快な声が響く中、エールの樽のフタが『パカン!』と割られる。その音は、宴の始まりを告げる合図のようだった。
しかし、俺は慌てて制止の声を上げる。
「レヴィア様! ちょっとお待ちを! それ、我々も飲むので、シェアでお願いします」
「もう……ケチ臭いのう」
レヴィアは不満げな声を上げるが、そこは譲れない。
すると次の瞬間、驚くべき光景が広がった。レヴィアが両手を樽に置いたまま呟くと、隣に『ボン!』という音と共に、全く同じ樽が出現したのだ。
「コピーしたからお主らはそれを飲むのじゃ」
得意げに胸を張り、レヴィアは現れた樽を指さした。その顔には、まるで子供がいたずらを成功させたときのような、愉快そうな笑みが浮かんでいる。
「コ、コピー!?」
俺は思わず驚きの声を上げてしまう。
「なぜお主が驚くんじゃ? なぜコピーできるか、お主なら知っておろう?」
「いや、まぁ、原理は分かってますよ。分かってますけど、初めて見たので……」
俺は慌てて取り繕ったが、物をコピーするだなんてことをこんな簡単にやるとは全く予想だにしていなかったので、浮足立ってしまう。
「これならいいじゃろ」
そう言って、レヴィアは再びコピー元の樽に手をかける。今度こそ、樽ごと丸呑みしようとする勢いだ。
「ちょっとお待ちください」
ユータが急いでレヴィアの手を抑えた。
「な、何じゃ?」
レヴィアは俺から目をそらす――――。
何かを隠しているように見える。
「我々がそっち飲んでもいいですか?」
ユータの提案に、レヴィアは目を丸くした。
「な、何を言うておる。デジタルコピーは寸分たがわず本物じゃぞ」
「なら、そっち飲んでもいいですよね?」
ユータの言葉に、レヴィアは言葉に詰まった。その表情には、明らかな動揺が見て取れる。
「いや、ほれ、気持ちの問題でな、コピーしたものを飲むのはちょっと風情に欠けるのじゃ……」
バツが悪そうにごにょごにょと言い訳をするレヴィア。その姿は、まるで悪戯がばれた子供のようだ。
「折角なので飲み比べさせてください」
俺はニッコリと提案する。
「仕方ないのう……」
渋々同意したレヴィアの表情には、複雑な感情が浮かんでいた。
俺はオリジナルとコピーのエールを交互に飲み比べてみる――――。
舌で味わい、鼻で香りを嗅ぎ、利き酒師のように全力でエールを味わってみた。確かに、コピーした物もちゃんとしたエールである。そこそこ美味い。でも、なぜかオリジナルの樽の方が味に奥行きがある。まるで長い年月をかけて熟成されたかのような深みが感じられるのだ。
「やはりオリジナルの方が美味いじゃないですか!」
俺がジト目でレヴィアをにらむと、レヴィアは困惑の表情を浮かべる。
「な、なんでかのう……?」
レヴィアも理由は分からないらしい。以前、成分分析をしたそうだが違いは見つからなかったそうだ。
俺は思わず笑みを浮かべた。この世界のデジタルな本質と、アナログな感覚の不思議な共存。それこそが、この異世界の面白さなのかもしれない。
でもまぁ、酔っぱらってしまえば分からないくらいのささいな違いなので、気にせず、一同はコピー物を飲むことにした。その代わりにレヴィアには料理やほかの酒もどんどんコピーしてもらうことにする。
ポンポンとステーキや揚げ物、サラダや煮物がテーブルにあふれ、酒樽が積み重ねられていく――――。
まるで、おとぎ話に出てくる魔法の宴会のようだ。
次々にコピーされる料理にリリアンたちは唖然としている。物がコピーされるなんてことはこの世界の根本を揺るがしかねない事態なのだ。
彼女たちはコピーされた料理をフォークでつつきながら首をかしげていた。
俺が聞くと、二人とも無言でうなずいていた。
「我の偉大さに恐れ入ったか? キャハッ!」
上機嫌で戻ってくるレヴィアだが、また全裸である。その姿は、先ほどまでの恐ろしさを微塵も感じさせない、無邪気な少女そのものだった。
「レヴィア様、服、服!」
俺は急いで指摘する。
「忘れとった。ガハハハ!」
楽しそうに笑うレヴィアをジト目で眺めながら、俺は思わずため息をついた。
◇
「お待たせしましたー!」
戻ってきたアバドンの声が店内に響き渡る。両手いっぱいに酒と料理を持って現れた彼の姿は、まるでヒーローのようだった。
「待ってました!」「わーい!」「ええぞ、ええぞ!」
店内に拍手と歓声が巻き起こる。
俺が隣に台を広げて、調達した物を並べていると、レヴィアの目が輝いた。
「おっ! これはええな」
ウイスキーのビンを一本取った彼女は驚くべき行動に出る。
逆さに持ったビンの底で、レヴィアは指をパチッと鳴らした。すると、魔法でも使ったかのように、底の部分がきれいに切り取られ、即席の巨大グラスが完成する。それを一気飲みしていくレヴィア――――。
みんなが信じられないという目でおののく中、レヴィアは飲み干して満足げな表情を浮かべた。
「プハー! 最高じゃな!」
ドラゴンはすることなすこと全てが規格外で、思わずみんな圧倒される。その存在自体が、この世界の不思議さを体現しているようだった。
「カーッ! のどが渇くわい! チェイサー! チェイサー!」
レヴィアの豪快な声が響く中、エールの樽のフタが『パカン!』と割られる。その音は、宴の始まりを告げる合図のようだった。
しかし、俺は慌てて制止の声を上げる。
「レヴィア様! ちょっとお待ちを! それ、我々も飲むので、シェアでお願いします」
「もう……ケチ臭いのう」
レヴィアは不満げな声を上げるが、そこは譲れない。
すると次の瞬間、驚くべき光景が広がった。レヴィアが両手を樽に置いたまま呟くと、隣に『ボン!』という音と共に、全く同じ樽が出現したのだ。
「コピーしたからお主らはそれを飲むのじゃ」
得意げに胸を張り、レヴィアは現れた樽を指さした。その顔には、まるで子供がいたずらを成功させたときのような、愉快そうな笑みが浮かんでいる。
「コ、コピー!?」
俺は思わず驚きの声を上げてしまう。
「なぜお主が驚くんじゃ? なぜコピーできるか、お主なら知っておろう?」
「いや、まぁ、原理は分かってますよ。分かってますけど、初めて見たので……」
俺は慌てて取り繕ったが、物をコピーするだなんてことをこんな簡単にやるとは全く予想だにしていなかったので、浮足立ってしまう。
「これならいいじゃろ」
そう言って、レヴィアは再びコピー元の樽に手をかける。今度こそ、樽ごと丸呑みしようとする勢いだ。
「ちょっとお待ちください」
ユータが急いでレヴィアの手を抑えた。
「な、何じゃ?」
レヴィアは俺から目をそらす――――。
何かを隠しているように見える。
「我々がそっち飲んでもいいですか?」
ユータの提案に、レヴィアは目を丸くした。
「な、何を言うておる。デジタルコピーは寸分たがわず本物じゃぞ」
「なら、そっち飲んでもいいですよね?」
ユータの言葉に、レヴィアは言葉に詰まった。その表情には、明らかな動揺が見て取れる。
「いや、ほれ、気持ちの問題でな、コピーしたものを飲むのはちょっと風情に欠けるのじゃ……」
バツが悪そうにごにょごにょと言い訳をするレヴィア。その姿は、まるで悪戯がばれた子供のようだ。
「折角なので飲み比べさせてください」
俺はニッコリと提案する。
「仕方ないのう……」
渋々同意したレヴィアの表情には、複雑な感情が浮かんでいた。
俺はオリジナルとコピーのエールを交互に飲み比べてみる――――。
舌で味わい、鼻で香りを嗅ぎ、利き酒師のように全力でエールを味わってみた。確かに、コピーした物もちゃんとしたエールである。そこそこ美味い。でも、なぜかオリジナルの樽の方が味に奥行きがある。まるで長い年月をかけて熟成されたかのような深みが感じられるのだ。
「やはりオリジナルの方が美味いじゃないですか!」
俺がジト目でレヴィアをにらむと、レヴィアは困惑の表情を浮かべる。
「な、なんでかのう……?」
レヴィアも理由は分からないらしい。以前、成分分析をしたそうだが違いは見つからなかったそうだ。
俺は思わず笑みを浮かべた。この世界のデジタルな本質と、アナログな感覚の不思議な共存。それこそが、この異世界の面白さなのかもしれない。
でもまぁ、酔っぱらってしまえば分からないくらいのささいな違いなので、気にせず、一同はコピー物を飲むことにした。その代わりにレヴィアには料理やほかの酒もどんどんコピーしてもらうことにする。
ポンポンとステーキや揚げ物、サラダや煮物がテーブルにあふれ、酒樽が積み重ねられていく――――。
まるで、おとぎ話に出てくる魔法の宴会のようだ。
次々にコピーされる料理にリリアンたちは唖然としている。物がコピーされるなんてことはこの世界の根本を揺るがしかねない事態なのだ。
彼女たちはコピーされた料理をフォークでつつきながら首をかしげていた。