少女は床の掃き掃除をしていた。
父の店を開く時間が迫っている。
今日はどんなお客がくるだろうか。
あの女の子はくるだろうか。
ただの小遣い稼ぎでも、なぜか気分は弾む。
それはきっと、大好きなカメラに囲まれて、いろんな人に出会うことができるからだ。
お小遣いをもらったら、何を買おう。
写真の額縁でも買おうか。
それとも、奮発して性能の良いカメラを買ってしまおうか。

少女は写真が好きだった。
母に貰ったカメラが、自分の思うままに撮った写真が好きだった。
心から純粋に、本当に大好きだった。
休日の静かな家。普通に見えた幸せな家族は、少女にとってはほんの少し歪だった。
扉と鈴がぶつかる音を合図に、少女の一日は始まる。