テストが全部返ってきた。初日に受けた三教科はケアレスミスが多く、いつもより点数が低かった。それ以外はまあ予想通りという感じ。駿河くんと土佐辺くんは幾つか満点があったみたいで先生が誉めていた。やっぱりあの二人には敵わない。
「安麻田ーっ、赤点回避したぞ!」
「おまえのおかげだ、心の友よ!」
スポーツ推薦組が数人、感極まった様子で抱きついてきた。彼らは一日も休まず勉強会に参加している。苦手科目を中心に、分かるまで何度も何度も質問するほど真剣に取り組んでいた。
「君たちが頑張ったからだよ」
「ぁ安麻田ぁああ~ッ!」
「良いやつだなおまえ~!!」
男泣きする彼らを宥めていたら、土佐辺くんが間に割り入っててきた。
「おまえら、オレにゃ礼は無しか」
「うるせー、おまえ怖ぇんだよ!」
「一回で理解できねーと怒るし!」
「なんだとこの野郎、表出ろや!」
そう、土佐辺くんの解説は非常に高度で、しかも次から次へと教える問題が変わるスパルタ式。ついていけなくなった人を個別でフォローするのが僕の役割だった。故に、スポーツ推薦組のほとんどは僕が教えたことになる。
あの時は土佐辺くんの教え方が下手なのかもと思ってしまったけど、きっと僕に役割を与えるためにワザと難しく説明していたんだろう。おかげで、同じクラスでありながら今まで疎遠だったスポーツ推薦組と仲良くなれた。
「安麻田ぁ~! 土佐辺が怖いよ~!」
僕の後ろに隠れるスポーツ推薦組。そんな彼らを土佐辺くんは苦々しい表情で睨み付けている。
助け舟を求めて視線を彷徨わせれば、勉強会の発案者である檜葉さんは駿河くんと談笑していて、こちらに全く気付いていない様子だった。
どうしたものかと困っていたら「おまえら安麻田にくっつき過ぎだ!」と土佐辺くんがスポーツ推薦組をひっぺがしに来た。