そしてその次の日も、
「佐々木くんおはよう。今日は朝からあったかいね」
僕が登校すると西沢さんが笑顔で挨拶をしてくれた。
どころかあの日以来、西沢さんは毎日僕に挨拶をしてくれるようになったのだ。
突然始まった朝夕2回の挨拶タイム。
「西沢さんおはよう。だよね、暖かいよね」
何度も失敗を繰り返して、ようやく僕も普通に挨拶を返せるようになった――と思う、多分、気がする、きっと。
いやまぁ挨拶を返すだけなんだけどね?
「佐々木くんおはよう」
って言われたら、
「おはよう西沢さん」
って返して。
「佐々木くんまた明日ね」
って言われたら、
「ばいばい西沢さん」
って言って。
「あったかいよね」
って微笑まれたら、
「だよね、暖かいよね」
っておうむ返しに答えるだけなんだけどね?
もしクラスカースト1軍メンバーが聞いたら大爆笑すること間違いなしだろう。
それでも僕にとってはこれだけでも、ものすごい勇気のいることだったんだ。
そして挨拶以外にも、やっぱり西沢さんが最近よく僕を見ている気がした。
いらぬ誤解を招かないようになるべく視線を合わせないようにしているから、そんな気がするだけなんだけど。
それでも時々ふと視線が合っちゃうんだよね。
西沢さんはそのたびに、優しい笑顔で僕なんかにこっと笑いかけてくれるのだった。
「こ、これってもしかして――!?」
そして僕はとある結論に思い至った。
この推理はかなりいい線行ってると思う。
「もしかして西沢さんは僕が通っていた中学に、好きな人がいるんじゃないかな?」
中学時代の僕のクラスメイトに一目ぼれして、だから僕に仲を取り持って欲しいとか?
それってすごくありそうじゃない?
この前西沢さんと偶然出会ったのは僕の地元、中学校の学区内だ。
だから西沢さんが、一目ぼれした相手がもしかしたら僕の知り合いかもしれないと思って、そうだったら紹介して欲しいと思ってる――とかあっても全然不思議じゃないもんね。
え?
西沢さんが僕に好意があるかもって?
あはは、ないない、それはないから。
西沢さんが底辺陰キャの僕なんかを好きになる理由はゼロ、どころかマイナスだもん。
絶対零度-273.15℃って感じ。
何度も言うけど僕と西沢さんは、そもそもからして接点すらないんだ。
もし仮に、万が一天文学的な確率でそんな地球外知的生命体が地球にやってくるレベルの奇跡が起こったとしたら。
僕は全裸で逆立ちしてグラウンド一周してあげてもいいよ。
賭けてもいい、絶対にそれだけはないから。
まぁ、そもそも逆立ちからしてできないんだけどね。
そう言えばこんなこともあったっけか。
「ねぇ佐々木くん、5時間目の社会は移動教室で視聴覚室に行くでしょ? さっき社会の小島先生に次の授業で使うプリントを視聴覚室まで持って行って欲しいって言われたんだけど、手伝ってもらえないかな?」
「え、僕? えっと……」
大好物のヤマザキの「大きなハム&たまご」と「アップルパイ」を食べ終えて、お昼休みに静かに一人でスマホを弄っていた(唯一の友人である柴田くんは昼休みはいつも文芸部に行っている)時に突然言われたこともあって、僕はあからさまにきょどってしまう。
「誰か男子に手伝ってもらうようにって言われたんだけど、わたしあまり仲のいい男子がいなかったから困ってたの。ダメかな?」
そんなビクついてしまった情けない僕に、だけど西沢さんは優しく笑いかけてくれるのだ。
「そ、そうなんだ」
「ごめんなさい、もしかして今って忙しかった? 誰かと連絡中だったり?」
「ううん全然、暇だから大丈夫。任せて」
西沢さんに頼まれごとをされて嫌と答える男子がいるだろうか?
いいや、そんな男子は存在しない。
そして僕は男子だった。
僕はすぐに立ち上がると、授業の用意をもって西沢さんと一緒に職員室に向かった。
「佐々木くんおはよう。今日は朝からあったかいね」
僕が登校すると西沢さんが笑顔で挨拶をしてくれた。
どころかあの日以来、西沢さんは毎日僕に挨拶をしてくれるようになったのだ。
突然始まった朝夕2回の挨拶タイム。
「西沢さんおはよう。だよね、暖かいよね」
何度も失敗を繰り返して、ようやく僕も普通に挨拶を返せるようになった――と思う、多分、気がする、きっと。
いやまぁ挨拶を返すだけなんだけどね?
「佐々木くんおはよう」
って言われたら、
「おはよう西沢さん」
って返して。
「佐々木くんまた明日ね」
って言われたら、
「ばいばい西沢さん」
って言って。
「あったかいよね」
って微笑まれたら、
「だよね、暖かいよね」
っておうむ返しに答えるだけなんだけどね?
もしクラスカースト1軍メンバーが聞いたら大爆笑すること間違いなしだろう。
それでも僕にとってはこれだけでも、ものすごい勇気のいることだったんだ。
そして挨拶以外にも、やっぱり西沢さんが最近よく僕を見ている気がした。
いらぬ誤解を招かないようになるべく視線を合わせないようにしているから、そんな気がするだけなんだけど。
それでも時々ふと視線が合っちゃうんだよね。
西沢さんはそのたびに、優しい笑顔で僕なんかにこっと笑いかけてくれるのだった。
「こ、これってもしかして――!?」
そして僕はとある結論に思い至った。
この推理はかなりいい線行ってると思う。
「もしかして西沢さんは僕が通っていた中学に、好きな人がいるんじゃないかな?」
中学時代の僕のクラスメイトに一目ぼれして、だから僕に仲を取り持って欲しいとか?
それってすごくありそうじゃない?
この前西沢さんと偶然出会ったのは僕の地元、中学校の学区内だ。
だから西沢さんが、一目ぼれした相手がもしかしたら僕の知り合いかもしれないと思って、そうだったら紹介して欲しいと思ってる――とかあっても全然不思議じゃないもんね。
え?
西沢さんが僕に好意があるかもって?
あはは、ないない、それはないから。
西沢さんが底辺陰キャの僕なんかを好きになる理由はゼロ、どころかマイナスだもん。
絶対零度-273.15℃って感じ。
何度も言うけど僕と西沢さんは、そもそもからして接点すらないんだ。
もし仮に、万が一天文学的な確率でそんな地球外知的生命体が地球にやってくるレベルの奇跡が起こったとしたら。
僕は全裸で逆立ちしてグラウンド一周してあげてもいいよ。
賭けてもいい、絶対にそれだけはないから。
まぁ、そもそも逆立ちからしてできないんだけどね。
そう言えばこんなこともあったっけか。
「ねぇ佐々木くん、5時間目の社会は移動教室で視聴覚室に行くでしょ? さっき社会の小島先生に次の授業で使うプリントを視聴覚室まで持って行って欲しいって言われたんだけど、手伝ってもらえないかな?」
「え、僕? えっと……」
大好物のヤマザキの「大きなハム&たまご」と「アップルパイ」を食べ終えて、お昼休みに静かに一人でスマホを弄っていた(唯一の友人である柴田くんは昼休みはいつも文芸部に行っている)時に突然言われたこともあって、僕はあからさまにきょどってしまう。
「誰か男子に手伝ってもらうようにって言われたんだけど、わたしあまり仲のいい男子がいなかったから困ってたの。ダメかな?」
そんなビクついてしまった情けない僕に、だけど西沢さんは優しく笑いかけてくれるのだ。
「そ、そうなんだ」
「ごめんなさい、もしかして今って忙しかった? 誰かと連絡中だったり?」
「ううん全然、暇だから大丈夫。任せて」
西沢さんに頼まれごとをされて嫌と答える男子がいるだろうか?
いいや、そんな男子は存在しない。
そして僕は男子だった。
僕はすぐに立ち上がると、授業の用意をもって西沢さんと一緒に職員室に向かった。