今年のゴールデンウィーク、わたしは家族で大阪に旅行をしていた。

 せっかくの連休なので佐々木くんと一緒にいたい気持ちもあったんだけど、お父さんとお母さんとの時間もやっぱり大切なので、身体が2つあったらいいのになと思ってしまう。

 でも高校生になった今は、スマホがあるおかげで離れていても簡単に連絡がとれるから、そこまで寂しいということはなかった。


『海遊館だよー』
🐟
『大きなサメです』
🦈
『帰ったらお土産わたすね』
🎁


佐々木直人
『写真見たけど』
『大きくてビックリした』

『クジラかと思った』
『まず水槽からして大きいし』
『おみやげ楽しみにしてるね』


『佐々木くんは』
『なにか変わったことあった?』


佐々木直人
『こっちは特にはないかな』
『普通の連休』
『家でゴロゴロしてる』


『友だちと遊びに行ったりは』
『しないの?』


佐々木直人
『僕はあまり友達いないから』
『行かないかな?』


『ごめんなさい』
『そういう意味じゃなくて』


佐々木直人
『えっと』
『ぜんぜん気にしてないから』
『超ほんと』
『だから気にしないで』


『ほんと?』
『怒ってない?』


佐々木直人
『ほんとほんと』
『それに今は』
『西沢さんがいるからね』
『帰ったらまた』
『一緒に帰ったり遊んだりしようね』


『うん! 約束だよ!』


佐々木直人
『あ、でも』


『なに?』
『どうしたの?』
❓❓


佐々木直人
『そろそろ中間テストだから』
『勉強しないと』
『いけないかなって』


『うぐっ……』
『テンションが落ち武者』
『なんか変な予測変換でちゃった』
💦


佐々木直人
『ごめん!』
『旅行中なのに』
『テストのことは忘れて楽しんでね!』


『大丈夫です』
『スクショ見れば元気出るから』
『無問題』


佐々木直人
『まさか例の!?』
『やめて!?』
『せめて僕に言わずにこっそり見て!』
『恥ずかしくて死んじゃうから!』


『じゃあ』
『こっそり見たことを報告するね』


佐々木直人
『もっとやめて!?』


『あはは』
『冗談だし』
『佐々木くんが嫌がることはしないから』


佐々木直人
『西沢さんってさ』


『なになに?』
💓


佐々木直人
『けっこうお茶目だよね』


『そうかな?』


佐々木直人
『実はさ』
『もっと静かな感じの女の子だって思ってた』


『えっと』
『もしかして幻滅しちゃった?』


佐々木直人
『まさか』
『そんなことありえないし』
『親しみやすくていいと思うよ!』


『えへへ、ありがとさんです』
『あ、もうこんな時間割』
『また予測変換が』
『ぴえん』
🥺
『いつもライン付き合ってくれて』
『ありがとう!』


佐々木直人
『僕も楽しいよ』
『こっちこそありがとう!』


『おやすみなさい』


佐々木直人
『おやすみ』
『またね』


 夜寝る前に、今日一日あったことをラインで佐々木くんに報告する。

 そしてそんなわたしに、佐々木くんは普段と変わらない様子で楽しく返事を返してくれた。
 だから旅行中はいつもみたいに佐々木くんに会えなくても、それだけでわたしはとても幸せな気分になれるのだった。

 まぁ今日はちょっと失言して焦っちゃったけど。

 人は些細なことで傷つくし、ケンカをするし、そして誰かを嫌いになったりする。
 だから気を付けないといけなかったのに――。

「佐々木くんが優しい人で良かった……」

 佐々木くんとなんでもないやり取りをするだけで、佐々木くんのことを考えるだけで、胸がポカポカと温かくなってくる。

 付き合えば付き合うほどに、いつもにこにこしてて優しい佐々木くんと、でもここぞという時に見せる芯の強い佐々木くんに、わたしはどんどんと魅了されていくのだった。

「佐々木くん、好き……大好き……。この幸せがずっと続きますように――」