……っ、
頬杖をついた舞さんが俺を見つめる。
『誠梨』
空が明るいときに舞さんの口からはじめて聞いた。
普段は、誠梨"くん"
だけど夜だけは、くんが消えて呼び捨てに変わる。
酔ったときにしか呼ばない呼びかたでそんなことを言うのは、まだ酔いが冷めきっていないのか、それとも、誠梨って呼べばなにを言っても許されると思っているのか。
顔の温度が上がるのがわかる。
これじゃあまるで、俺のほうがお酒を飲んだみたいじゃん。
「……舞さんってさ、ずるいよね」
18歳と21歳、たったの3歳の距離。
近いはずなのに、この3歳差がいまの俺にはすごく遠くに思える。
早くおとなになりたい。
舞さんにこども扱いされるのは嬉しくない。
「ずるくないよ〜」
またこどもに話しかけるような優しい声。
追いつきたいのになかなか縮まらない。
「……俺は好きだよ、舞さんのこと」
まさか俺がこんなことを言うなんて思っていなかったのか、目の前の舞さんはびっくりしたような顔をする。