じつを言うと、カバンのなかにまだ開けられていないレモンの天然水がもう1本入っている。
ここに来るまえに立ち寄ったコンビニで、自分の分と舞さんの分の2本を買っていた。
舞さんは、カバンのなかに新しいレモン水が1本隠されていることを知らない。
言えばよかったのに、言うのをやめてしまった。
好きな人と関節キスができるチャンスだなんて思ってしまうなんて、まだまだ俺はガキだ。
───ピコンッ
舞さんと俺の間に裸で置かれたスマホが通知を知らせた。
明るくなった画面に表示された1通のメッセージ。
み う
【 せな、今日も勉強会するからウチくる? 】
テストの時期がだんだんと迫ってくるにつれ、同じクラスのメンバー数人と、最近はよく一緒に集まって勉強をしていた。
そのなかのひとりからのメッセージ。
舞さんも反射的に俺のスマホに目を向けたから、メッセージの内容は読まれたはず。
なにも言わずに俺のスマホをただ見つめる舞さんに隠すことなく、スマホを手に取らずコンクリートの上に置いたままの状態で文字を打つ。
【 いかない 】
わざと、舞さんに見えるように。