わたしは背中から顔を上げると窓に映る瑞樹を見た。

遠くを見つめる瑞樹の目には悲しみの色が広がっている。

「瑞樹は最低じゃない。

こんなにも岬さんのことを思っている瑞樹が最低な訳ない」

「真琴に話したことで随分と気持ちが楽になったよ」

「わたしは瑞樹の為ならどんなことでもするよ」

瑞樹は窓に背を向けると笑顔を見せる。

「僕は真琴にそんなによくしてもらえるようなかっこいい男じゃないけど」

「瑞樹は変なこと言うね。

かっこいいとかかっこ悪いとか関係ないし、それに瑞樹はかっこいいよ。

それに優しい、しかも才能豊か」

「それは良かった。僕はこれでもね、随分と真琴の前ではかっこつけてたんだよ。

真琴に嫌われてもう会ってくれなくなったら寂しいからね。

今日はかっこ悪いところを見せてしまったから嫌われたんじゃないかって心配だったんだ」

わたしは瑞樹の顔を覗き込んだ。

「本当にわたしから嫌われると思った?」

「ん~……」

「思っていたらショックだけど?こんなことで人を嫌いになるような小さい人間だと思われてるってことだから」

瑞樹は今にも吹き出しそうな顔で答えた。

「全く思ってなかった。ただ、『そんなことないよ』て真琴に言って欲しかっただけなんだけど、いっぱい褒めてもらえて嬉しいよ」

「うわっ言わなきゃ良かった」

「僕は言ってもらえて良かったけど?」

「全く!」

「あははっ」

わたし達は笑った。心の中はほとんどが悲しさで埋まっていて、でも笑った。