「でも、この前も言ったけど気持ちに変化が起きている。

僕の死に責任を感じているのならそんなことはいいから幸せになって欲しいと思う一方で、

いつまでも悲しんでいて欲しい、僕のことを思い続けて欲しいとも思う。

岬が笑っているところを見ると苦しくなったし、

彼の車に乗り込む岬を見てショックも受けた。

もしも彼と付き合っているのならすぐにでも別れて欲しいと思う。

今はもう彼に傷つけられた岬に僕は何もしてあげることができないから。

だけどね真琴、僕はこんな風にも考えるんだ。

岬が彼と一緒に居ることで僕の影を見続けるのならそれでもいいかなって。

僕の知らない誰かと一緒になってしまえば岬の中から僕は徐々に消えていくだろうから」

 また空白の時間が流れる。

掛ける言葉など見つからない。

わたしは瑞樹の言葉にただ胸を痛めている。

瑞樹の声が優しいから尚更悲しみが深くまでしみ込んでくる。

静まり返った空気を瑞樹の細やかな声が揺らす。

「僕は今、自分の愚かさを恨んでいるよ。

最低だなって……本気で思うよ。

岬に幸せになって欲しいと思うのに、そこに自分が居ないことをたまらなく嫌だと感じる。

これからまだこの世界を生きていく岬の気持ちの方が大切な筈なのに、

もうすでに終わっている僕の気持ちを優先するのは違うのに……」

「瑞樹の気持ちだって大切だよ」

「一層岬のことを連れて行ってしまいたいとすら思うんだ。

そんなことは出来ないのだけど」