瑞樹は優しい笑みを浮かべ首を横に振る。

「岬は彼を手に入れる為に必死だっただけさ。

何も悪くない、何も」

瑞樹の言葉に驚いたわたしは体ごと瑞樹の方を向いた。

「どうして瑞樹?それじゃあ誰かを自分のものにする為なら何をやってもいいって言っているように聞こえるよ。

わたしはそんなの納得できないよ。ねぇ瑞樹!」

体がかぁと熱くなった。鼓動が乱れて息が上がって───わたしはむきになっているんだ。

でも、瑞樹はそれとは対照的に穏やかな笑顔で答える。

「そうだね。ただ僕は岬が羨ましくも思うんだ。

僕には誰かを手に入れる為にそこまでのことはできないから」

瑞樹の言葉はわたしのどの場所にも刺さらない。

「そんなの羨ましいとか言わないでよ瑞樹!」

「けど、もっと盲目的になっても良かった」

わたしは気持ちを落ち着かせる為に深く吸った息をゆっくりと吐いて、そして瑞樹に質問をした。

「岬さんはその100万円を渡してどうなったの?」

「結局岬は彼に100万円を渡しても振られてしまって、そして僕に全て正直に話したんだ。

その後僕達は付き合うことになった」

「でも、岬さんは彼に会いに行くことをやめなかった」

瑞樹はわたしの言葉にゆっくりうなずくと話を続ける。

「そうだね、岬と付き合ってからも僕は一度も彼に会いに行く岬を引き留めることができなかった。

岬を苦しめることになるし、

そんなことをしたら戻って来なくなるんじゃないかと考えた」