瑞樹は目の前の絵をじっと見つめたまま、

次の話をするか迷っている。

わたしは黙って瑞樹が話し出すのを待った。

そして少しすると「これは岬と僕が付き合う前の話なんだけど」と前置きをしてから話し始めた。

「ある日岬は、僕にこんなことを話したんだ。『知り合いの車に傷を付けてしまって100万円払うように言われているの、親にも頼めないしどうしよう』てね。

僕は両親が経営しているホテルやレストランでアルバイトをしていたから、その貯金の中から岬にお金を渡した。

でもそのお金はあの男の手に渡った」

「えっどういうこと?」

「寄りを戻したいと言った岬に彼が出した条件だった」

「それってつまり、彼は岬さんに100万円くれたら寄りを戻してやるって言って、

岬さんはそんなお金ないから嘘を言って瑞樹から100万円借りたってこと?」

「そういうことになるのかな」

「えっ酷いそんなのその男の人もだけど……岬さんも」