「はぁ……本当に凄いよ瑞樹の絵。ピアノもバイオリンも弾けて絵も上手で顔も綺麗でスタイルも良くてしかも頭もいいって……ずるいよ」

「ずるいってなるの?これでも見た目以外は全部自分の努力で手に入れたものだけど?」

「ごめん、つい……羨ましくなっちゃって」

「ううん、照れ隠しに言ったの」

瑞樹はにこっと笑う。

その笑顔はいつだって穏やかで綺麗で、

好きだなと思う。

「ねぇ瑞樹!この絵完成させようよ!」

「僕は描けないけど?」

「わたしが描くよ、瑞樹に教えてもらいながら。
絵は少しは描けるんだ。

けどこんな色わたしには作れないから教えて欲しいの。

それでも瑞樹ほど上手には描けないかもしれないけど」

「いいよ。ただ、もしも家族の誰かがこの絵が未完成だということを知っていたら、ある日完成した絵を見てどう思うかな?」

「瑞樹が描いたって思うんじゃない?」

「ご名答」

「あははっ」

「はははっ」

こうやって笑いあって楽しいと感じると、途端に不安にが襲ってくる。

それは瑞樹が居なくなることを考えるから。

常にその不安が背中にぴったりとくっついていて、すぐに正面に現れては目の前を暗闇にしてしまう。

いずれ瑞樹が居なくなることはわかっていたのに、

別れが来ることを考えると寂しくてどうしようもなくなる。

だけど、だから今、こうして一緒に居られる時間を大切に思う。

そしてわたしにできることは精一杯やろうと思う。