演奏が始まりわたしは画面に集中した。

この前のように実際に会場で見るのとは違ってその場の空気を感じ取ることはできないけれど、

それでも、画面を通して緊張感は伝わってくる。

 出場者達は皆、テレビなどで見るバイオリニストが弾いている姿とはまるで違って大きな動きや明るい表情などはなく、

練習してきたことを懸命に披露しているといった感じだった。

───ここは丁寧に、次は静かに入っていく、ここではゆっくりと……そんな声が聞こえてくるようだった。

「次が僕の番」

瑞樹の言葉に画面を見たまま返事をした。

「うん」