***
昨日約束した時間に瑞樹の部屋に来たわたしは電気が付いた瞬間目に飛び込んできた光景に驚愕した。
「凄い部屋……だね」
大きな黒い一人掛けのリクライニングソファーに座る瑞樹が、もう一台ある同じソファーに座るよう手で合図した。
「どうぞ」
「うん……」
天井の埋め込み式照明の柔らかいブラウンに照らされた広い部屋はまるで音楽スタジオのよう。
ソファーに座るともう一度部屋を見渡した。
何と言っても目を引くのが部屋の真ん中で漆黒の光を放つグランドピアノ。
その重厚で気品溢れる佇まいには緊張感がある。
「立派なピアノだね」
「そうだね。バイオリンに転向してからもピアノは毎日弾いてたよ」
それは過去形で告げられる。
瑞樹はここに居るのにこうして会話をしているのにピアノを弾くことも部屋の電気を付けることもできない。
瑞樹が操作できるのはスマホだけ。
だけどわたしにメッセージを送ることはできない。
それは瑞樹が存在していないことを証明しているようで酷く寂しい気持ちになった。
昨日約束した時間に瑞樹の部屋に来たわたしは電気が付いた瞬間目に飛び込んできた光景に驚愕した。
「凄い部屋……だね」
大きな黒い一人掛けのリクライニングソファーに座る瑞樹が、もう一台ある同じソファーに座るよう手で合図した。
「どうぞ」
「うん……」
天井の埋め込み式照明の柔らかいブラウンに照らされた広い部屋はまるで音楽スタジオのよう。
ソファーに座るともう一度部屋を見渡した。
何と言っても目を引くのが部屋の真ん中で漆黒の光を放つグランドピアノ。
その重厚で気品溢れる佇まいには緊張感がある。
「立派なピアノだね」
「そうだね。バイオリンに転向してからもピアノは毎日弾いてたよ」
それは過去形で告げられる。
瑞樹はここに居るのにこうして会話をしているのにピアノを弾くことも部屋の電気を付けることもできない。
瑞樹が操作できるのはスマホだけ。
だけどわたしにメッセージを送ることはできない。
それは瑞樹が存在していないことを証明しているようで酷く寂しい気持ちになった。