***

 次の日、瑞樹との約束の時間に公園に行くと、

ベンチに座ってわたしを待つその後ろ姿は憂い帯びていた。

 何も言わず隣に座ると正面を見たまま瑞樹は話し始めた。

「僕の目的そのものが変わるかもしれないんだ。

思いに変化が出てきている」

沈黙はしばらく続いた。

 近くで犬が吠えている。

いつまでもかからないバイクのエンジンの音が鳴り響く。

瑞樹は抑揚のない虚ろな声で話す。

「岬はまた、彼のところに行ってしまったんだね」

瑞樹は黙っては少し話し、また黙っては少し話すを繰り返した。

「僕の死に責任を感じているのならその必要はないと伝えたいよ」
 
「うん」

「岬に幸せになって欲しいっていう気持ちは変わらない」

「うん」

「でもあの彼と一緒にいることを選ぶのなら……もう僕は岬を守ることが出来なくなってしまったから……」