瑞樹の顔を見るのが怖かった。

なのに瑞樹が口にした言葉はわたしが予想するそれとはあまりに掛け離れていた。

「あっ驚かせちゃったね」

思わず瑞樹の顔を見る。

その顔は申し訳なさそうに歪んでいる。

「どういうことなの瑞樹?だって岬さんは瑞樹の彼女でしょ?

あの男の人は誰?彼氏?だってまだ2ヶ月しか経ってないよ瑞樹が死んで…ご、ごめん」

「謝らないで僕が死んでいるのは事実だから」

そう言って笑うと話を続けた。

「あの人は岬の元彼なんだ。今は“元”がついているのかわからないけど」

「瑞樹が居なくなって寂しくて彼のところに戻ったってこと?」

「岬が帰るところはいつだって彼のところだったよ」

「えっ」

瑞樹の声は終始明るい。

こんな辛い話をまるでカフェで談笑しているみたいに話す。

「それでもいいと思っていたよ。岬が僕を拒否しない限り何度でも受け入れよう何度でも許そうって思っていた。

それだけ彼女に惚れていたんだ。今だってそう」

「そんなの……辛過ぎる」

「そうだね」

「瑞樹、大丈夫?……そんな訳ないよね」

「そうだな~もう死んでるからそもそもその概念がない。大丈夫とか大丈夫じゃないとか」

さっきまでにこやかだった瑞樹の顔から表情が消えた。