「じゃあ説明始めるね」

「うん」

「まず家族から。うちには中2の男子、不登校の中3女子、僕達と母親が違う高1の男子、それと僕には双子の兄が居るの。

けど、兄は2ヶ月前に交通事故で亡くなっている。ここまで聞いただけでも驚くことだらけだよね」

確かに驚いていた。あまりにも簡単に瑞樹のことを話すから。

それと思っていた以上に深い事情がありそうだったから。

「話を続けるね」

そう言うとちひろはあたかも淡々と説明した。

「中2の弟は難しい年頃であまり口を利いてくれないのと、変な態度を取ったり嫌な物言いをする時があるの。

不登校の妹は洗濯係をしていて、洗濯と食事とお風呂以外は部屋からほとんど出てこない。

母親の違う弟は自室で食事をしているの。ちなみに彼は家に居る時は自室に居ることがほとんどだし夕食もみんなと取らないから滅多に会うことはないと思うよ。

双子の兄が亡くなったことを今まで真琴に話さなかったのはいい話ではないから話さなかった、それだけのことだよ。

あと、両親は今海外に居て年末まで戻らない予定。ざっくりとした説明になっちゃったけど大丈夫?」

「うん」

返事をするとちひろは背中から突っ張り棒を抜き取ったかのようにぐにゃっとソファーに体を沈める。

「真琴がここで働き始めたらすぐにわかることだし、

だったら最初に話しておいた方が混乱しないで済むかと思って話したんだよ。

急にいっぱい聞いて真琴は大変かもしれないけど」

 窓の外では木や植物が爽やかな風に吹かれ涼しげに揺れている。

風通しが良く光がふんだんに入ってくるこの豪邸に闇が潜んでいるなんておおよそ思わない。

「ありがとうちひろ色々と話してくれて。

言いたくないこともあったかもなのに」

「いいんだよ。いつかは真琴に全部話そうと思っていたから。

ただきっかけがなくて話せなかったの。

僕はね、真琴には全部知って欲しいんだよ」

 ちひろの言葉に胸の奥がチクリと痛んだ。