電話が終わりちひろが心配しているのを感じながらスマホをカバンにしまった。

「真琴?」

ちひろは名前を呼ぶだけでそれ以上何も言わない。

「ちょっとね、今…」

「真琴、いいよ言い辛いなら言わなくても。

って……ごめん……電話の内容……聞こえちゃってた」

一瞬のうちに頭の中をおじさんの言葉が駆け巡る。

電気やガスが停められていることも、お父さんが居ないことも、お父さんがお金を借りていることも、全部ちひろにバレてしまった。

 ショックで言葉を失った。

凄く恥ずかしいものを見られた気持ちになった。

笑い飛ばして「あははっ最悪だよね!」なんて言えたらいいけどすでに膝の上に顔を埋めてしまっている今、それはもう手遅れだ。

「真琴?」

ちひろの小さな手が背中に触れてもわたしは顔を上げることができない。

「うち、ちひろの家と違って貧乏なんだ」

聞こえていなかったのか、聞こえていないふりをしたのか、ちひろはまるで違う話をした。

「真琴、うちでアルバイトしない?」

「えっ…」