アルバイトが休みの今日は河川敷に寄ってから帰ることにした。

いつもより重い荷物と夏の強い日差しに悪戦苦闘しながら河川敷に着くと橋の下に避難しようともうひと踏ん張りする。

「暑い……」

そんな独り言を漏らし橋の下に行くとそこには先客がいた。

「あっ真琴~」

「うわっびっくりした」

パンパンに膨らんだカバンを放り投げ、パンパンに膨らんだ袋を枕に倒れていたちひろ。

「僕は驚く気力もないよ」

よほど荷物が重くてここまで来るのが大変だったのか起き上がる気配がない。

「まったく、少しずつ荷物持ち帰れば良かったのに」

「もっと早く教えてよそれ」

 瑞樹と出会ってから今日まで一度もちひろと顔を合わせてなかった。

けど、意外にも全然気まずくない。

まぁこの状態ということもあるのだけど。

「ここは日陰だからちょっと涼しいね」
 
「うん、やっと生き返ってきたよ。真琴は夏休み中もアルバイト?」

「その予定だったんだけど、オーナーの奥さんのお姉さんがフルタイムで働くことになって、わたしは今月いっぱいで辞めることになったの」

そんなことを話しているとスマホに着信が来た。

画面には『利幸おじさん』の文字。

 おじさんはお母さんの弟で、わたしは昨日電話でおじさんに今の状況を全て話した。

お父さんが居なくなったこと、電気とガスが停められたこと、もうすぐ水道も停められてしまうこと、そして今月いっぱいでバイトを辞めること、新しいバイトが見つからないこと。

わたしの話を聞いておじさんはすぐに「うちに来るといいよ」と言ってくれた。

「ごめんちひろちょっといい?」

「もちろん」

電話に出るとおじさんの声が曇っている。

もう、その声でいい話ではないということがわかる。

「真琴学校は終わったか?」

「うん」

ほんの少しの沈黙の後におじさんは話し始めた。