もしかしてわたしの為に?

と思ったのも束の間、

今度は理斗君の文句が始まった。

「何あいつ調子こいてんじゃねぇよ」

「今の感じ悪かったよね」

「下らねぇのはあいつの方だっての」

「理斗、今日機嫌悪いのかな?」

「生理中なんじゃね?あいつナプキン取り換えにトイレに行ったんじゃね?

タンポン派かもわかんねぇけど」

綾音さんの発言に他の3人が笑うと藤堂君がそれを止めた。

「いい加減にしろよ綾音、理斗に全部言うからな!」

今度は瀬尾君が言う。

「調子こいてんのはお前だろ綾音!」

山田君と長谷部君がその後に続いた。

「理斗に報告しようぜ」

「そうだな」

他の男子も言葉にはしないけど綾音さん達を文句あり気な顔で見ている。

みんな理斗君を悪く言われるのは許せないようだった。

 本人不在にも関わらず問題は解決へと向かう。

「わかったし!もうやめるから理斗には内緒な」

観念した綾音さんがそう話すと教室には平穏が戻った。

「今回だけだからな!」

 わたしの頭の中では昨日の理斗君の言葉が巡っていた。

あいつらは凶器であって便利な道具でもある。

使い方次第でどうにでもできる。

だからうまく使えばいいだけ。

 少し悲しくも聞こえた昨日の言葉。

理斗君にとってクラスのみんなは便利な道具。

でも、この状況を見たら感心するしかなかった。