朝から気温が高かった今日、体育の授業が終わった後の教室では綾音さん達が汗で濡れた髪の毛のセットをしている。

「ちょっと綾音次あたしにもドライヤー貸して」

「あん」

「その次あたしね」

「はいはい」

 わたしは昨日のお礼にグミを渡そうと理斗君が戻ってくるのを待っていた。

 グミはわたしが大好きなお菓子で、その中でもちょっと値段の高いこのグミはわたしの1番のお気に入り。

 次の授業が始まる5分前になり、理斗君が藤堂君達と教室に入って来た。

わたしは理斗君の所に行くとポケットに手を入れた。

「あの理斗君、これ昨日のお礼に……」

理斗君は足を止めることも、目を合わせることもなく「いい」と言ってわたしの脇を通り過ぎた。