お互い暫く口を閉じたままだった。

沈黙の中、わたしはお母さんのことお父さんのことそして親友の美緒ちゃんのことを思い出していた。

みんなわたしの大好きな、けれどわたしを置いて遠くに行ってしまった人達。

お母さんは入院して1週間も経たないうちに亡くなった。

美緒ちゃんは同じ高校に行くと約束をした翌日に急遽引っ越すことが決まった。

お父さんは朝起きたら居なくなっていた。

みんな突然、本当に突然わたしの前から居なくなった。

だからわたしは誰かと仲良くなることに臆病になっている。

でも、理由はそれだけじゃない。

自分でもわかってる。

もともと臆病なんだ。

中学の時だって美緒ちゃんが傍に居てくれたから他の子と話せただけで、

自分から誰かと話すことはできなかった。

だから、高校に入ってすぐ綾音さんに話し掛けられた時もどう話していいかわからなくて……無視してしまったんだ。

そんなつもりはなかった。

本当は話したかった。

でも、緊張で言葉が出てこなかった。

それでわたしは綾音さんから嫌われた。

しかも、ブランドものの傘やハンカチ、ペンなどを持っていたからお嬢様と勘違いされてしまった。

傘はお別れの日に美緒ちゃんがプレゼントしてくれたものだし、

ハンカチとペンはちひろが誕生日にくれたもので、

わたしはそれらがブランドものだと知らなかった。

全て聞こえてくる陰口で知ったこと。

1週間経った頃に綾音さんに声を掛けたけどその頃にはもう遅かった。