夏休み前の学級委員会が放課後に行われた今日、

男子学級委員の渡辺君はやっぱり委員会には来てくれなかった。

毎度のことながら男子学級委員の欠席理由を「体調不良の為」と嘘を言うのも嫌になる。

委員長も他のクラスの学級委員もみんな嘘だとわかっている。

“またか”という空気が流れる。

委員会に参加しているわたしが白い目で見られるのは違うのに。

 教室へ向かって渡り廊下を歩いていると屋上に人影を見つけた。

たしか屋上に生徒は入れない筈。

誰だろう?

眩しさに目を細めてよく見ると、そこに居るのは理斗君だった。

 あれから一度も理斗君とは話していない。

腹が立つとか馬鹿の最上級とか酷いことを言われたけど、

あれはわたしを思って言ってくれたことかもしれないと後になって思った。

だから気にはなっていたけれど理斗君の周りには常に誰かが居て声を掛けることができなかった。

そもそも声を掛ける勇気があったのかすら不明なのだけど。

 教室に戻ると帰り支度をし、昇降口へと向かう。

けれどその足は階段の途中で止まる。

やっぱり理斗君と話そう。

降りてきた階段を一気にかけ上ると屋上の扉に手を掛けた。

ひんやりとした金属がわたしの熱と決意を奪っていく。

自分から人に話し掛ける勇気、わたしにはないんだった。

 ドアノブから手を離し一歩下がる。

でもその場から離れることがなかなかできない。

 勝手に学級委員にされ、しかも仕事を全部押し付けられているわたしを理斗君だけが気に留めてくれた。

言い方はきつかったけど、あれはわたしを思っての言葉だった。

 わたしはもう一度ドアノブを掴むと扉を開いた。