「ねぇ理斗君」

「ん?」

「一緒に電車に乗るの初めてだね」

「そういえば」

わたしは笑顔を見せると繋いだ手にぎゅっと力を込めた。

最後まで、理斗君が見えなくなるまで笑顔でいると決めている。

 空港に着き、わたし達は空いている椅子に座った。

「飲み物買ってこようか?」

「理斗君が欲しいならわたしも一緒に買いに行く」

少しの時間も離れることはできない。

「俺はいらないかな」

「わたしも」

「そうか、じゃあちょっとトイレ行ってくる」

「わたしも一緒に行く」

「出るの?」

「えっ…何かその質問嫌だ」

「だな、一緒行こう」

理斗君は椅子から立ち上がると手を差し出す。

すぐにその手を握って立ち上がるわたしを理斗君は笑う。

「エサ食ってない魚みてぇ、簡単に釣れんの」

「理斗君にだからだもん」

「それはいい」

わたし達は顔を合わせると笑った。