「それでも僕は瑞樹が居ること教えて欲しかった!!」

突然大きな声を上げるちひろをどうなだめていいかわからない。

「ごめんちひろ……」

「ずるいよ真琴ばっかり!!」

大粒の涙を流すちひろを見て何とかしなきゃと焦っていると理斗君の声が聞こえてきた。

「そんなに真琴を責めんなよちひろ」

いつの間にかリビングのソファーに座っていた理斗君。

ちひろは涙を拭き取るとくるりと椅子を回転させ怒りの矛先を理斗君に向けた。

「僕の方が年上なんだよ、命令しないで」

「あぁ、それは悪かったな」

「理斗も瑞樹のこと知ってたんだね。そこで話聞いてたのに全然驚いてないもん。

ひどいよ真琴、理斗には教えて僕には教えないなんて」

何も言えないでいると理斗君が話をしてくれた。

「俺はたまたま気付いてしまっただけ」

「僕が鈍いみたいに!」

「お前は瑞樹が居るのを感じてただろ」

ほんの少しの間沈黙となり、理斗君が静かに話し始めた。

「中庭で夕食を食べた日、あの場に瑞樹も居たんだからちひろの気持ちは十分伝わってるよ」

「でも僕は瑞樹が居るって知ってたらもっと話したいことがあったよ。

いっぱいあった。瑞樹の話も聞きたかった。

晴と葵だってそうだよ、瑞樹が居るって知ってたら話したかった筈だよ」

「だから瑞樹は真琴に口止めしたんだよ。そんなことをしたら……お前らと別れるのが辛くなるから」

 理斗君の言葉にはっとした。

別れが辛くなるから、だから瑞樹は……。

自分が居ることを知ったらみんなが怖がると瑞樹は話していたけど、

本当の理由はきっと理斗君が今、言ったこと。

ちひろは理斗君に背中を向けると「やっぱり僕は理斗のことが嫌いだよ……」

そう言ってカウンターに突っ伏すと「だって僕のことお前って呼ぶから」と言って甲羅に入った亀のように動かなくなる。

理斗君は口をへの字にすると立ち上がり“何とかしてやれ”と言うようにわたしに向かって顎を突き上げると部屋を出て行った。