「ごめん真琴、今からちゃんと話聞くね」

わたしはちひろから手を離した。

「わたしが瑞樹と出会ったのは……」

おとなしくなったちひろの目は不安に揺れている。

「うん……」

「瑞樹が死んだ後なの。信じられないかもしれないけど、本当のこと」

ちひろは瞼を上げ息を呑むと「真琴は嘘を言わないよ」そう言って話を続きを待った。

 テーブルの上に乗せられたちひろの小さな2つの手は固く握り込まれている。

緊張している。

落ち着いた声で話すことを意識した。

「このスケッチブックは瑞樹からちひろへのプレゼントで、中にはクマの絵がたくさん描いてある」

「ずっと前に僕が瑞樹にお願いしたんだ。

クマの絵を描いてって。

瑞樹は本当に描いてくれてたんだ……」

「だけど、完成する頃には渡せるような関係じゃなくなってしまって、

でも瑞樹は暇があればクマの絵を描いていたの」

「いつか僕にプレゼントする為に……」

「うん」