「理斗君……」

「ん?」

「なつきは理斗君なんだね。

わたしはあのなつきに会えたんだね。

ずっと会いたかったんだよ。

どんな人か知りたかった。

どんな顔をしてどんな声をしてどんなことを話すのか知りたかった。

そしたらなつきは理斗君だった。

わたしが想像していたなつきよりもずっとかっこいい人だった。

見た目も中身も声も全部」

「お前の想像のなつきに勝てて良かったよ」

少しつっけんどんにそう話すとわたしを抱きしめる理斗君。

そして耳に届く切ない声。

「やっと、片想いじゃなくなった……」

弱々しい響きが胸の奥深くまで浸透していく。

 わたしもずっとなつきに片想いをしていて、

でもずっと前からわたし達は両想いだった。

 あの、わたしをときめかせる字を書く夏君も、

いつも心を温めてくれたなつきも、

1人の人だった。 

そしてわたしは今、その人の腕の中でその鼓動を感じている。

「理斗君……大好き」

「その気持ち、間違いなく俺の方が上」

 静かな夜がわたし達の心をゆっくりと満たしていった。