スマホを耳から降ろすと部屋を出た。

そして理斗君の部屋のドアを小さくノックする。

返事が聞こえドアを開くとテーブルの前に座っていた理斗君が椅子から立ち上がった。

木製の照明スタンドがテーブルの上の参考書とノートを照らしている以外他に明かりはなく、

暗く静かな部屋で小型の冷蔵庫の音だけが響いている。

ドアを閉めるとわたしは自分の鼓動に胸を叩かれながら言葉を押し出した。

「わたしはなつきに恋をしてたんだ。

わたしはずっと前から理斗君のことが好きだった……みたい」

理斗君は目の前に来るとわたしを抱きしめた。

「みたいってなんだよ」

「理斗君のことが好き」

わたしの体を一層抱き寄せる理斗君。

その背中に両手を回すと胸に顔を埋めた。

理斗君の鼓動が頬に伝わる。

心地いいその音と温かさに、ここが自分の居場所だということを確信する。

空気も入れない程にわたし達は抱き合う。

静かに長く息を吐き、理斗君はわたしの肩に顔を埋める。

ゆっくりとした呼吸が聞こえる。

わたしは理斗君の胸から顔を上げた。

理斗君は顔に掛かるわたしの髪の毛を手で寄せる。

冷蔵庫の音がぴたりと止まり、代わりに夜の静けさが響く。

わたし達は深い静寂の中で引き寄せられるようにキスをした。