「ひとつ上だし、瑞樹君って呼んだ方がいいかと……」

「そんなこと言っても再来年には真琴の方が年上になるし」

「あっ…」

「はははっここ笑うところ。瑞樹でいいよ」

そう言われても笑うことはできなかった。

「瑞樹はいつ……死んじゃったの?」

それは昨日から気になっていたことで、でも聞いてすぐに謝った。

「ごめんなさい、こんな質問……」

自分が死んだ話などしたくない筈。

そう思ったけれど瑞樹は首を横に振った。

「僕には付き合って1年になる彼女が居てね、

あの日僕達は一緒に居たんだけど、

彼女の家から帰る途中で僕は工事中の橋から転落してしまったんだ。

それが2ヶ月前のこと」

「2ヶ月前…」

それを聞いてまた衝撃を受けた。

この2ヶ月の間ちひろとは何度か顔を合わせているけれど、

兄弟を亡くしたような素振りは全くなかった。

今思い返しても“そういえば”と思える節はない。

 ただ、2ヶ月前はまだ5月で、だから彼はブレザー姿なのだということだけが府に落ちた。

「その様子だとちひろからは何も聞いていないみたいだね」

わたしがうなずくと瑞樹は本題に入った。

「僕はね、もしも彼女が僕の死に責任を感じて自分を責めているなら、

その必要はないと伝えたいんだ。

でも、彼女には僕が見えないから僕が見えて僕と話せる人がどうしても必要で、

この2ヶ月毎日探してた。

そして真琴、ようやく君に出会えた。

本当に良かったと思ってる」

出会えて良かったと瑞樹は言うけれどわたしはそれを喜ぶことができなかった。