「そんなに慌てなくても大丈夫だよ、

だってそれはフィクションでしょ。

でも、僕と一緒に居たい気持ちは十分に伝わったよ。

だって僕のことを人間以外の何かに変えてしまおうとするくらいなんだからははははっ」

「そんなに笑わないでよ」

「ごめんごめん、じゃあ少しその話に乗ることにしよう。

お日様かぁ……でもそれだと雨の日は一緒に居られないし、

天気が良くても雲に隠されてしまうこともあるよ。

それに夏は暑くて真琴は僕から逃げることになる」

「あっ…」

「風はどう?風ならずっと一緒に居られるよ。

それに真琴がバナナの皮を踏みそうになった時、

転ばないように吹き飛ばすことだってできる」

「そんなにドジじゃないもん」

「そうかな~」

わたし達は目を合わせると笑った。

こんな時にバナナの皮なんて言う瑞樹が悪いんだ。

「風、いいかも」

「じゃあ決まりだね」

「うん」

「ねぇ真琴?君は自分の気持ちに気付いてるの?」

何を言われているのかわからず首を傾げた。

「いつからか真琴はよく、僕に理斗の話をするようになっていたよ、それは常に真琴の中に理斗が居るっていう証拠。

つまり真琴は理斗のことが好きだってこと」

瑞樹の言う通り、わたしの中には常に理斗君が居たように思う。

少し前までは瑞樹のことしか考えられなくて自分の気持ちに気付けなかった。

でも今はわかっている。

瑞樹を好きな気持ちと理斗君を好きな気持ちが別のものであることを。

「気が付いてるよ、わたしは理斗君のことが好きだって」

まるで花の蕾が一斉に開くのを見るように瑞樹の顔に笑みが広がる。

わたしはパチっと瞬きをするとそのあまりに綺麗な笑顔を頭の中に保存した。

「よし、じゃあ絵の続き描こうか」

「うん」