「真琴は僕のことが心配だったんだね。自分で言うのもなんだけど僕は相当可哀そうな少年だったから。

僕と毎日一緒に居て、僕のことが気の毒に見えて、一緒に居てあげなきゃって気持ちと、

何とかしてあげなきゃって気持ちがどんどん強くなっていったんだと思う」

瑞樹の言う通り、わたしは瑞樹が心配だったしできるだけ一緒に居ようと思った。

それに、気の毒に見えたことがないと言ったら嘘になる。

自分ができることなら何でも協力したいと思ったし、何とかしたいといつも思っていた。

でも今は───。

「今はわたしの方が瑞樹に居てもらわないと困るんだよ」

「真琴の傍には理斗が居るから大丈夫だよ」

その言葉に胸がぎゅっと締め付けられる。

手の甲をわたしの顔に向かって伸ばす瑞樹。

その手は鼻に触れる寸前で止まる。

「ほら理斗のことを言ったら───」

瑞樹はふっと笑う。

「呼吸が止まった」

確かに止まっていた息を吸い込むと瑞樹が可笑しそうに笑う。

「違うよ瑞樹が手を近づけるから。

それと理斗君が居るから瑞樹が居なくても平気とかそういうことじゃないよ。

わたしのこと大切だって言うならずっと居てよ瑞樹っ」

「僕は真琴のことを本当に大切だと思ってるよ、それは今の真琴だけじゃない。
ずーっとずーっと先の未来の真琴も大切なんだ」

瑞樹がわたしを思ってくれていることはわかるけど“一緒に居て”の返答にはなっていない。

「はぐらかしてる?」

「まさか」

この時はまだ、わたしは瑞樹の言葉に隠された真実に気付くことができなかった。