瑞樹はゆっくりと話し始めた。

「僕はこうして真琴と一緒に歩くことはできるけど、こんな夜道で真琴が誰かに連れ去られても助けることができない。

だからさっきからそんなことが起こらないようにと心の中で何度も祈っている」

瑞樹の言葉にわたしはふて腐れたように返答をしてしまう。

まるで子供を説得するように話す瑞樹が悪い。

「一緒に歩いてくれるだけでいい」

「転んでも手を差し伸べることもできない」

「自分で立つ」

「怪我をして歩けなくなっても抱き上げることも肩を貸すこともできない」

「そんなドジしない」

「そうかな?真琴はわりと転ぶタイプに見えるけど?」

「瑞樹の前では気を付ける」

瑞樹はふっと笑うとわたしの顔を覗く。

「なかなか言い返してくるね~」

「だって……」

わたしは瑞樹の視線から逃げるように顔をそむけ下を向いた。

「僕にはその冷たくなった手を温めてあげることもできないよ」

「いいよそんなの」

「でも、今僕が言ったことぜ~んぶ、理斗にはできる。

理斗は必ず真琴、君を守ってくれるよ」

胸がぎゅっと締め付けられるのを感じた。

でも今は、それについて何も考えられなかった。