瑞樹は笑顔で空を見上げた。

眉尻を下げていた岬さんも笑顔になる。

「何か今、わたし達一緒に……」

途中までそう言った岬さんの言葉に瑞樹は空を見上げたまま答えた。

「わかるよ」

そして2人の声が重なった。

「「演奏しているみたい」」

わたしは驚いて少し遅れてそれを言葉にした。

「演奏しているみたい」

公園に2人の笑い声が静かに響く。

そこは2人だけの世界へと変化する。

「今の会話みたいに、わたし達の演奏はお互いを思いやってぶつかっていたね」

「そうだね」

2人とも一旦下を向いて笑うと正面を向く。

その仕草はシンクロしている。

そして2人は黙った。

岬さんの目からは涙がずっと流れている。

瑞樹は遠くを見つめていた。

わたしはあの上弦の月のようにただそこに居た。