そして、岬さんを思う痛いくらいに優しい気持ちを知った時、

わたしは瑞樹の為ならどんなことでもしたいと心から思った。

岬さんに裏切られても尚、思い続ける瑞樹を見ているのが辛い時もあった。

それでも瑞樹と過ごす時間は宝物のように大切な時間だった。

いつしかわたしの方が瑞樹と一緒に居たいと思うようになっていた。

 瑞樹の部屋で夜を過ごす日が増えて、またいろんな瑞樹を知った。

ピアノとバイオリンが弾けて絵が上手。

才能豊かでいろんなことを知ってる瑞樹。

頭も良くて見た目だって申し分ない。

もしも生きていたらどんな未来があったんだろう───そんなこと苦し過ぎて想像することすら拒否してしまう。

 わたしにだけ見えて、わたしだけが話せる、そんな瑞樹が愛おしくて仕方がない。

だからこれからもずっと───。

「岬…」

瑞樹が話し始めわたしはまた、そのままの言葉を岬さんに伝えた。

「岬、僕は岬を不安にさせてしまっていたけど、僕にとってはあれが精一杯だったんだ。

足りなかったかもしれないけど、僕の全てだったんだ。

僕は初めて会った幼かったあの頃からずっと岬のことが大好きで、だから岬には幸せになって欲しいと心から願うよ」

「瑞樹っわかってたよ、瑞樹が精一杯わたしにしてくれてること。

わたしはそれをもっと感じていたくて馬鹿なことをした……」

「馬鹿なのは僕さ。岬をしっかりと繋ぎ止めておかなかったのだから……」

「馬鹿なのはわたし」

「ううん、僕の好きな人が馬鹿な筈がない」

「そんなこと言ったらわたしの瑞樹だって馬鹿な筈ないよ」

「岬の僕だったんだね、嬉しいよ」