瑞樹は岬さんに話す。

わたしはまた、そのまま岬さんに伝えた。

「岬に嫌われていた訳じゃなかったんだね。

それがわかって僕はとても喜んでいるよ。

でもひとつ後悔している。

岬を強引に引き留めなかったこと。

岬を思ってそうしなかった……でもとっても不安にさせてしまっていたんだね」

岬さんの声は涙声に変わる。

「瑞樹……瑞樹が大好きだよ」

瑞樹は下を向いた。

髪の毛が顔を隠す。

冷たい風が何度も通り過ぎる。

長い沈黙が続く。

瑞樹はまだ顔を上げることができずにいる。

 わたしは空を見上げた。

上弦の月が浮かんでいる。

瑞樹と一緒にこの月を見た日のことを思い出した。

瑞樹がこの月に名前があることを教えてくれた。

そういえば、瑞樹が初めてわたしに声を掛けてきた時も月のことを言っていた。

『もう5日で満月になる』

突然声を掛けられて驚いたっけ。