“瑞樹がどんな気持ちだったかわかる?”そんな言葉を言いかけて飲み込んだ。

わたしが岬さんを責める必要はない。

そんなのただの……自己満足だ。

悲しんでる瑞樹を見て悲しかった自分の気持ちをぶつけたいだけ。

 岬さんは深く吸った息を静かに息を吐くと話す。

「ピアノを弾いてるとね、ふと瑞樹が傍に居るような気がしてた。

そんなことが何度もあってそれで彼に会ってみた。

もしかしたら瑞樹が現れてくれるかもしれないと思って。

けど瑞樹は現れてくれなくて、でもそれはわたしに見えなかっただけで……瑞樹はやっぱりわたしの傍に……居たんだね」

わたしはベンチから立ち上がった。

「中村さん、わたし瑞樹と場所変わるね」

瑞樹はベンチから立ち上がる。

そして岬さんの隣に座ると膝の上でぎゅっと握りしめている岬さんの手に自分の手を重ねた。

「瑞樹……」

右手に重なる瑞樹の手の上に左手を重ねる岬さん、見えないけれど瑞樹の存在をその手に感じている。